でも、辞書に載る形で、この様に促音が二つ続くのは珍しいと言ってよかろう。小さい辞書ではこの二語だけ、ということもあるのだが、『広辞苑』の三版で捜しても、この二つの他には、「褐鉄鉱カッテッコウ」「直滑降チョッカッコウ」だけのようだ。外来語を入れても、ウィッケット、サッケッティ、ボッカッチオぐらいのようだ。外来語の促音挿入にもいろいろ問題があるのだが、此處ではおく。
辞書に載らない形で考えてみると、「六角形」「八角形」がそうだし、辞書には「ホッキョクケン」で載るだろう「北極圏」もそうだ。
考えてみると、「北極圏」はホッキョクケンと言い得るのだが(「[六八]角形」も)、「赤血球・白血球」は「セキケッキュウ・ハクケッキュウ」とは言いづらい。「直滑降」の「チョクカッコウ」も、どこか、ぎ[ごこ]ちない。「褐鉄鉱」は少し性格が違うが、カツテッコウとは言いそうにない(「褐色」は「カツ」ではなく「カッ」でなければ落ちつかぬからということもあろうが)。
「赤血球・白血球・褐鉄鉱・直滑降」、この三文字熟語、意味から考えるといずれも1+2で、「北極圏・六角形」が2+1であるのと対照的である。セキケッキュウなどとならないのはこういうところに原因が有るように思う。
ついでに言えば、カ行の前の「キ」が促音化するのは(「的確」のテッカクなど)、「ク」が促音化するの(「学校」のガッコウなど)に比べると辞書に載りにくいのに、セッケッキュウが載っている、というのもセキケッキュウの言いにくさ(「言わなさ」(?))を証明している。
【関連する記事】