「1.本書のねらい」というところに次の様にある。
もちろん,本書に示される筆順は,学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって,このことは,ここに取りあげなかった筆順についても,これを誤りとするものでもなく,また否定しようとするものでもない。
実は、この「本書のねらい」のところを削る形でこの「手びき」を掲載している本があるのだ。国語科教育法資料集とかいった本でそういうのがあった。しかしまあこんなのはましな方で、多くは教育漢字の筆順一覧を載せて終り、というのが多い。
では筆順はどう書いても言いのか、という点に関しては、学習指導要領・国語にも、「筆順にしたがって」とあり、又「手びき」の「5.本書使用上の留意点」には、
1.本書に取りあげた筆順は,学習指導上の観点から,一つの文字については一つの形に統一されているが,このことは本書に掲げられた以外の筆順で,従来行われてきたものを誤りとするものではない。
となっているので、なんでもよい、というわけではないと考えているようである。しかし、「従来行われてきた」筆順がどのようなものであるのかが列挙されている訳ではなくその点は不安である。手びきの中で「広く用いられる筆順が,2つ以上あるもの」として示されているのは、「上点店・耳へん・必・癶・感盛・馬・無・興」といったところである。他の字は2つ以上ないのか?
例のビデオでも取り上げていた「左右」の筆順だが、この「手びき」では字源主義(象形文字に遡るもの)ではなく、
横画が長く、左払いが短かい字では、左払いをさきに書く。(右有布希)横画が短かく、左払いが長い字では、横画をさきに書く。(左在存抜)
としている。でも「当用漢字字体表」や「常用漢字表」で、「左右」の長さは違っているのかな。原本は見ていないのだが、一般に見られるものでは違わないように見えるのだが。「手びき」では、「本書は字体の手びきではない」と言っているし。「右有……」の筆順にも二種あると言って宜いように思う。
しかし、「手びき」は当用漢字によっているわけだから、〈常用漢字に沿って〉という名目でよいから、一度〈筆順金科玉条〉の隆盛に反省を促すべく、「筆順指導の手びき」を見直して欲しいもんだ。でも下手に見直すと、また「新筆順!」とか銘打って儲けようとする出版社が居るんだろうと思って悲しくなる。
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