1997年04月03日

【つぶやき】

 昨日触れた、前田愛『近代読者の成立』では、〈深夜放送のアナウンサーがつぶやくようにしゃべる〉ことについて触れている(「あとがき」でも)。ラジオが家庭のものから個人のものになったということである。
 たしかにそんな雰囲気が有った。でも今でもそうした流儀を続けている人は居るのだろうか。


 私が「つぶやき」に接したのは、オールナイトニッポンの第二部、すなわち深夜三時以降の部においてである。第一部では比較的元気にあかるく喋るパーソナリティーが多かったように思うのだが、第二部に出てくるような、フォークソンググループの一人であるような男性は、「つぶやく」というかボソボソと消え入りそうな声で語るのであった。歌声はちゃんと出ているのだが、話し声はボソボソモソモソなのである。これを聞くと本当に眠くなるので、「歌うヘッドライト」に替えたものだった。そういえばラジオ局が一つしかない地方では、「オールナイトニッポン第一部→歌うヘッドライト(或は走れ歌謡曲)」という中継の仕方も多かったはずだ。ともかくダイヤルを替えるだけで、深夜から早朝に替わった気がした。KBCラジオを聞き続けた場合には「おはよう浪曲」にならぬと朝は来なかったのだ。
 しかし、その後このボソボソモソモソは影をひそめてしまったのではなかろうか。ネクラという言葉が流行り、明るいのがよしとされた。暗い歌を歌う中島みゆきやさだまさし、更には松山千春などが馬鹿に明るい口調で喋り、大笑いをする。しかも、聴取者に語りかけるというよりも、スタジオ内での会話(パーソナリティーが一人である場合にも、「スタッフ」なる人への語りかけ)がなされ、それをラジオの前で傍聴する、という感じに変化した。
 暗い人達はどうしてるのかな。NHKの「ラジオ深夜便」でも聞いているのだろうか。



 現在のラジオが個人のものである、というのはまさにそうで、私も結婚してからラジオを聞く機会が減った。しかし、車に乗るようになると又聞くようになった。でも朝夕の番組だけである。だから「ラジオ深夜便」は殆ど聞いた事がないのだ。


【最古級・補】
 NHKニュース7でも「最古級」と言っていた。考古学の世界では普通に言うのだろうか。日本語史の方でも使ってみるか。「これは最古級の用例です」と。

posted by 岡島昭浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 目についたことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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