2003年11月16日

「大学」にはなぜ「校」が付かない?(hiroy)


はじめまして。最近この掲示板を知り、大変興味深く拝見いたしております。

さて早速ですが、質問をさせて下さい。


小学校、中学校、高校(高等学校)、大学。。。

何故、大学だけ「校」が付かないのでしょうか?


「大学校」は気象大学校、防衛大学校など実在しますが、学校教育法の

対象外となっており「大学」ほど一般的ではありません。

※『大辞林 第二版』(三省堂)には大学校の意味に「(3)大学の俗称。」

とあり、「三波伸介の凸凹大学校」はこれに該当しそうです。


また、何故「小」「中」「大」という物の「大きさ」に関する言葉を

冠するのでしょうか?(知識領域の大きさを示しているのでしょうか?)

初等学校、中等学校、高等学校、と呼ぶのならば分かりやすいと思う

のですが。


手元の辞書には、以下のようにありました:


学校

(前略)「学校」の語は「孟子」に由来。

(『広辞苑 第四版』岩波書店)


大学

学術の研究および教育の最高機関。一般に中世ヨーロッパの大学を起源

とし、初めボローニア大学などのように教師や学生のギルド的団体とし

て発生し、近代国家の発達とともに一九世紀以後今日のような形態となっ

た。わが国今日の大学は明治以後欧米の大学を模範として設立されたもの。

(後略)

(『広辞苑 第四版』岩波書店)


大学

(2)律令制下、地方の国学に対して、中央の官吏養成機関。式部省に属し...

(後略)

(『大辞林 第二版』三省堂)


大学

中国、儒教の経典(けいてん)の一。一巻。もと「礼記」の中の一編であるが、

宋代に四書の一つとされて重視された。(後略)

(『大辞林 第二版』三省堂)


これらからの情報から想像すると、「大学」という言葉は"university"

を、古代の官吏養成機関に倣い(「学校」という言葉とは独立して?)

名づけられた訳語、というようにも思えます。しかしそもそもなぜ

「大学」なのか。また「小学校」や「中学校」の名前の由来との間に

何か関係があるのでしょうか?


以上、よろしくお願いします。



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 17:08:39)

hiroyさんの質問に答えずに申し訳ないのですが、関連の疑問を思い出したので、書き込みます。

数年前から耳にするようになった「大学院大学」というのは、「大学」なんでしょうか?それとも「大学院」なのでしょうか?一体なんでこんなややこしい名前なのでしょうか?「400億万円!」とか、そんな言葉を思い浮かべてしまいます・・・。



NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 17日 月曜日 02:18:35)

『学校教育法で「大学」と規定されているから』というのは答えになっていないでしょうか。


それ以外の法令に基づくものは「大学校」ですね。

自治大学校、消防大学校、警察大学校、防衛大学校、防衛医科大学校、国土交通大学校、航空保安大学校、独立行政法人航空大学校、独立行政法人海技大学校、独立行政法人農業者大学校、独立行政法人水産大学校、気象大学校、海上保安大学校、税務大学校、社会保険大学校。職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校


大正7年の勅令「大学校令」で設置されたのは、「大学校」ではなかったと思います。新潟県の「教育史年表」のページには「大学令」となっていますが、正式には「大学校令」だったはず。


「大学院大学」は「(学部を置かない)大学院(だけの)大学」という意味ですね。通常の「○○大学大学院」との区別のために「○○大学院大学」としたのでしょう。


学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)

 第五十三条 大学には、学部を置くことを常例とする。<後略>

 第六十二条 大学には、大学院を置くことができる。

 第六十八条 教育研究上特別の必要がある場合においては、第五十三条の規定にかかわらず、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる。


国立学校設置法(昭和二十四年五月三十一日法律第百五十号)

 第三条の三 学校教育法第六十八条に定める国立大学として、次に掲げる大学を置く。

   政策研究大学院大学

   北陸先端科学技術大学院大学

   奈良先端科学技術大学院大学

   総合研究大学院大学


教育史年表



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 19日 水曜日 19:10:05)

私は専門外ですが、「小学校、中学校、高等学校、大学」の中で、「大学」だけが異質というわけではなく、これらの呼び方はなぜかばらばらですね。


「中学に上がる」というのだから「小学に上がる」と言ってよさそうなものなのに言わない。(「小学」の呼び方は、辞書には出ていますが)


「中学校」が「中学」ならば、「高等学校」は「高学」と言ってよさそうなものなのに言わない。


ばらばらであります。


これらは歴史的に完全にひとそろいのものとして生まれたのでなく、それぞれ独自の変遷をたどってきたということが呼び方の違いに表れているのでしょう。時代ごとにそれぞれの学校が一般的にどう呼び慣わされてきたか、ということをたどるのは、なかなかむずかしそうですね。



hiroy さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 20日 木曜日 08:27:35)

道浦さん、NISHIOさん、Yeemarさん、コメントありがとうございます!


ちょっと調べてみたところ、文部科学省のサイトで『学制百二十年史』

というページを見つけました。ここで私の疑問に対するいくつかの答え

を見つけることができました。


以下、関連する歴史を簡単にまとめてみます:


・明治2年7月 教育行政と教育活動との2つの機能を併せ持つ「大学校」が発足。

・明治2年12月「大学校」が「大学」と改称。

・明治4年7月28日(廃藩置県の4日後) 従来の「大学」を廃止し「文部省」設置。

・明治5年8月 欧米学校制度をモデルとした「学制」公布。

全国に大学区、小学区、中学区という「学区」を設け、それぞれに「大学校」

「中学校」「小学校」を設置するという計画。

・明治6年 「学制」施行。その後試行錯誤が行われる。

・明治10年 東京医学校と東京開成学校を合併して東京大学設立。

・明治19年 学校種別にそれぞれの学校令を制定。

(帝国大学令、師範学校令、小学校令、中学校令など)

中学校令では、中学校を尋常・高等の二段階に区分。

その後、尋常中学校→「中学校」、高等中学校→「高等学校」と改称。


「小、中、大」というのは、「学制」における学区に由来するようですね。

興味深いのは、これが国際的に見ても画期的なものだったという、同サイ

トの説明です:


「学校制度は、学区制に基づき大学校・中学校・小学校の三種から成る

とされたが、それらが基本的に身分・階層の別なくすべての国民に開放

された単一の体系を採ったことは、当時米国を除けば国際的にもほとん

ど例を見ない画期的な特徴であった。」

(『学制百二十年史』「一 近代教育制度の創始」文部科学省)


面白いと思ったのは、行政機関でもあった「大学校」がすぐに「大学」

と改称されたり (明治2年)、また「学制」で「大学校」と計画されるも

明治10年に設立されたのは「東京大学校」ではなく「東京大学」、

という点です。何故か「大学校」という言葉は、すぐに「大学」とされ

てしまうようですね。これはやはり奈良時代の「大学」に大いに影響を

受けているのでしょうか。



学制百二十年史(文部科学省)



hiroy さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 20日 木曜日 11:45:12)

> 全国に大学区、小学区、中学区という「学区」を設け、それぞれに「大学校」

> 「中学校」「小学校」を設置するという計画。


すみません、「全国に大学区、中学区、小学区という...」の誤りです。

ここが肝心なところだったのに。。(^_^; 失礼しました。


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2003年11月11日

「置いてある」と「置いている」(道浦俊彦)


標記の違いはどうなんでしょうか?私は、接尾語としての「ある」は動的、「いる」は静的なイメージがを持っているのですが。

動詞としての「ある」は状態としての存在、「いる」は動物(生命体)の存在、というような違いも感じます。使い分けはあるのでしょうか?また地域差(方言)という可能性はどうでしょうか?



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 11日 火曜日 23:56:26)

この主題については多く論じられていますが、不勉強のまま我流に論ずることをお許しください。「生徒の読書推進のため、専従職員を置く」という言い方を例に取れば、

 a「専従職員を置いている」

 b「専従職員を置いてある」

 c「×専従職員が置いている」

 d「専従職員が置いてある」

 e「専従職員が置かれている」

 f「専従職員が置かれてある」

の5つの言い方が少なくともあり得ます(fは見慣れない感じですがあるのです)。ここで問題になっているのはaとbの言い方なので話を限定します。


aは、専従職員を置いた上司が、今でもその仕事内容について親身に気にかけて、その専従職員とコンタクトを密に取っている感じ。対して、bは、専従職員をやとったまま、上司は「あとは適当にやってね」とほったらかしてある感じ。


aの場合の「置く」は、継続的な行為(「現在〜ている」と言える、「備える」「有する」に近い)であるのに対し、bの「置く」は、瞬間的、一回的な行為(「連れてくる」に近い)です。aは「置く」という行為が継続しているのに対し、bは専従職員を「置いた」(雇った)、その結果が残存しているということであろうと考えられます。


同様に、「窓を開けている」は、「窓の開放状態を継続している」であり、「窓を開けてある」は「窓をガチャッと開ける行為が過去に行われ、その結果が残存している」ということだと考えられます。


この限りでは、「ている」は(状態の継続なので)「静的」、「てある」は(1度動作が行われた結果の残存なので)「動的」ということはできると思います。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 00:01:22)

最後の2段落は、次のように訂正した方がよいようです。


---

同様に、「窓を開けている」は、「窓の開放状態を継続している」であり、「窓を開けてある」は「窓をガチャッと開ける行為を過去に行い、その結果が残存している」ということだと考えられます。


この限りでは、「ている」は(状態の継続なので)「静的」、「てある」は(1度動作を行った結果の残存なので)「動的」ということはできると思います。




NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 02:17:05)

「置いておる」ともいいますね。文語的というか老人語というか。


動詞としては、「ある(有る・在る)」が存在一般で無生物が対象、「いる(居る)」「おる(居る)」は生物の存在を示すもの、と理解していました。

が、その昔、紀州弁使いの友人が「人がある」と言うのを聞いて非常に驚いた覚えがあります。(「物がいる」と言っていたかは記憶にありません)


「日本言語地図」の解説本(*)によると、「人が居る」を東日本では「いる」(東北の一部は「いた」)、西日本では「おる」、紀伊半島南部で「ある」

となっています。上代の名残りですね。


(*) 徳川宗賢『日本の方言地図』(中公新書)

  佐藤亮一監修『方言の読本』(小学館)




Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 02:46:54)

上で


> c「×専従職員が置いている」


この言い方に×印をしておきましたが、動詞によってはこのfのような言い方ができるようです。

こないだから、落ち穂らー麺という聞いたこともない即席ラーメンの四個入り近所の昨夜の店頭で百二十円で投げ売っていたから、あれを買ったとして五百八十円。(町田康「屈辱ポンチ」〔1998年発表〕『屈辱ポンチ』文春文庫 2003.05 p.155)
すなわち、「ラーメンが店頭で売っている」ということであり、「専従職員が置いている」と同様の言い方です。


もっとも、これは「ラーメン店頭で売っている」および「ラーメンが店頭で売られている」の混交(つまりは文のねじれ)かも知れません。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 02:48:49)

正誤

×近所の昨夜の ○近所の酒屋の



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 02:51:24)

再々、申し訳ありません。2つ上、


×動詞によってはこのfのような言い方が

○動詞によってはこのcのような言い方が


夜更かしで頭がぼんやりしているようであります。



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 16:59:46)

金田一春彦『日本語(下)』(岩波新書)65ページに、『「ある」と「いる」』という短い項がありました。それによると、生物か無生物かということとともに『「有心物」か「無心物」か』というのもポイントになるようです。


posted by 岡島昭浩 at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年11月07日

ウムラオト〜迷惑メール〜(Yeemar)


日本語の話題とはいえないので、「ことば会議室」には不適かもしれませんが、そのうち日本語に話が広がるかもしれませんので。


ここ1年ぐらいでしょうか、無差別に送られてくる迷惑メールがおそろしく膨大になってきました。1日に何十通といったところでしょうか。もしかすると100通に達しているかもしれません。


ほとんどは、海外からの英文メールです。私は個人ホームページを持っており、アドレスを公開しているため、暗躍業者によって私のアドレスがリストアップされてしまったものでしょう。


さいわい、英語でメールをくれる知り合いは少なく、「英文タイトルは、自動的に『ごみ箱』行き」という設定にして差し支えない状況です。(ただし、ごみ箱に行った中にも、まれに重要なメールがないとも限らないため、1日の終わりにごみ箱を空にするときにはざっとタイトルを確認します。その作業は多少めんどうくさい。)


さて、最近は英語ばかりでなくドイツ語の迷惑メールが届くようになりました。タイトルにウムラオト(ウムラウト)が付いているので、それとわかります。「おいおい、英語だけでも閉口しているのに、ドイツ語かね。この後、フランス語、アラビア語、ハングルまでが届くようになったらどうしよう」とうろたえました。


しかし、よく見ると、これはドイツ語ではありません。たとえば、怪しげな錠剤の広告と思われるメールのタイトルは

Söft Tab Wörks Fast änd öthër Drügs cikidri

(上記のウムラオトは表示されない場合があるかもしれないので、JISコードで翻字するなら「So¨ft Tab Wo¨rks Fast a¨nd o¨the¨r Dru¨gs cikidri」)
とあって、なんのことはない、英文の母音にウムラオトを使ってあるだけです。末尾の「cikidri」はランダムな文字列でしょうか、この種のメールには末尾に7字の意味不明字があります。


本文も意味不明で、

of light slanted into the shadows.

Our US Pharmacy is Open to You!
などと書いてあります。2行目が広告であるのは分かりますが、1行目はどうも関係ない文章のまぎれこみのような趣です。ずっと読んでゆくと、どうも「まぎれこみの文」と「広告の文」が交互に記述されているようです。これを添付のHTMLファイルで見ると(まぎれこみ文が非表示になり)正しく読めるのです。


思うに、これらの業者は、キーワードによってメールが「ごみ箱」に振り分けられることを避けるため、妙な小手先を弄したものでしょう。私のメールソフトの現状では、「タイトルにウムラオトがあるものは『ごみ箱』直行」ということはできず、毎日1〜2通ほどはこの手のメールに不愉快な思いをすることが続きそうです。


あるいはまた、英語圏で、母音にウムラオトをつける書き方がはやっているのでしょうか。そのへんは分かりません。



UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 08日 土曜日 00:37:41)

おそらくキーワードでフィルタをかけて自動削除されるのを防ぐ目的があるのだと思います。

私に届いたSpam mailで、正確には覚えていませんがタイトルが「0nline・・・」となっているものがありました。

「O(オー)」の代わりに「0(ゼロ)」です。



後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 09日 日曜日 22:58:25)

いろいろな手段を弄しているようですね。

SPAM メールリスト



UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 00:11:21)

ひょっとして…と検索してみたら、ありました「末承諾広告」。

「承諾」→「詳諾」という手口もあったとか。


「※」の代わりに「*」を使っているものもありますね。


P.S.

本日私のところに届いたSPAMメールのタイトル:Ph@rmacy Medicati0n D1scounts

経産省、“末承諾広告※”メールを違法に送信していた2業者を行政処分



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 12日 水曜日 18:16:40)

私のところに来る迷惑メールは、何やら回春薬のようなものとか、こちらでご紹介するには不適当なタイトルのものが多いのですが、比較的無難な例を挙げれば

;Loose "wei*ght or -mon;eyback,
などというように、単語の真ん中や両端に妙な記号をたくさんくっつけているものもあります。これでキーワードに引っかからないようにしているのでしょうが、同時に意味伝達の確実性も低下するわけで、諸刃の剣。見た目も、なんとなく狂気じみた気配が濃厚になっていて、受け手の心証を害すること請け合い。こういうやり方はやめたほうがいいのではないでしょうか。


posted by 岡島昭浩 at 17:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年10月29日

プラスのことば:「効率化」は「“好”効率化」を表す(ogi)

もともとの語には程度もプラスマイナスもないのに、ほかの語とくっつくとプラス表現になる語があると思います。
例えば「効率」は「効率的」「効率化」となると「効率がよいこと」を表します。
よくスポーツ選手などが「結果を出す」と表現することについて、ある時期新聞やテレビ、日本語本などでも問題になっていましたが、
私は「結果」は「よい結果」なのだと思っています。
こういった語はたくさんあると思いますし、もしかしたらプラス表現だけでないのかもしれません。
ただ、例を探すのが難しく、皆さんのお力を借りられたらと思って投稿いたしました。
また、この件について皆さんのご意見もぜひお聞かせください。

(ひと通りこれまでのものを見てみたのですが、見当たらないようなので投稿いたしました、もし似た項目があるようなら教えてください)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 29日 水曜日 18:00:40)

佐竹秀雄『サタケさんの日本語教室』(角川文庫 2000.03.25初版)の p.21に「結果を出す」という節があります。

そこに紹介されている例としては「評価」「タイプ」です。

 これ〔結果〕と似ているのが「評価」。「評価」自体には、よい場合も悪い場合もあるが、「評価されている書物」「その努力を評価したい」といえば、「よい」意味に限られる。ただ「結果」と違って、これらはすでに一般化していて、辞書にもこの使い方が載せられている。
 もう一つ似た語が「タイプ」。「彼はわたしのタイプよ」などと使い、これは「好みのタイプ」の意味だ。俗語的で、一般化の程度は、まだ「結果」以下のようである。
私の思いつくのはほかに:
・「天気」。悪い天気もあるはずだが、「今日は天気だ」といえば「良い天気」。
・「雰囲気」または「ムード」。「雰囲気がある」は、悪い雰囲気ではなく「良い雰囲気がある」ということ。
・「健康」も、healthの訳語であるからには「悪い健康」もあるはずですが、「健康な人」といえば、「健康の良い人」ということになります。
・「経済(的)」。「電気代がかからず経済だ」といえば、「経済に負担がかからない」。
・「始末」も、「おばあさんは始末な人で、新聞の折込広告をみな小さく切ってこよりでとじ、釘にかけていた」(高島俊男)というのは、「始末をきちんとつける=倹約する」ということでしょう。私自身は使わないことばなので、ニュアンスがよく分かりませんが。
・「しあわせ」。「仕合せ」だから、もともとは「巡り合わせ」というほどの意味。「しあわせのよい人」などと言っていたのが、「しあわせな人」になった。当然「しあわせの悪い子」(不幸な子)などという言い方もあるわけ。
・「理屈な」(金沢方言)「あーら理屈なー」というと、「ああら、いい考えね」ということ。「理屈」に「合っているか・合っていないか」を言うのを省略して、「理屈」だけで「合理的、名案」の意味を表した。

以上はただの思いつきです。これらとは反対に、悪い語感の伴うものもあるはずです。

・「批判」は、よい・悪いを論ずることですから、「私の説についてどうぞご批判ください」という場合、必ずしも「けなしてください」と言っているわけではないはずです。しかし、「私の考えは友人から批判された」というと、これは「非難された」に近い語感があります。

やや異質なものをごった煮的にまとめたようにも思われます。ご批判ください。


ogi さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 30日 木曜日 02:07:35)

ありがとうございます。
異質なものだとしても、とにかく拾ってみて、それからどういった類のものがあるか、何か規則を見つけられるか考えたいと思います。

「私の説についてどうぞご批判ください」の場合は敬意表現として見るとやっぱり、「けなしてください」の意があるのではないかと感じました。
でも、「批判」に似た類にマイナス表現になるものが探せば出てきそうに思いました。いろいろあたってみたいと思います。
「理屈な」はそうですよね。私も北陸出身なので、似たようなことばがあって、とてもよくわかりました。

「語彙索引の検索」で『サタケさんの日本語教室』が出てきたのに、それに先に当たらずに投稿してしまって申し訳ございません。
明日、図書館と本屋に行ってまずその本もじっくり見てみようと思います。
ある時期、「結果を出す」について批判がありましたが、私はそれは語の一面的なところしか見ていないのではないかと思っておりました。
ただ、新聞記事やニュースなどは「わかりやすく」という目的があると考えたとき、やはり問題が起きるのかもしれません。
例えば、新聞の見出しで「〜の公算」というのをよく見かけますが、これは「公算が大きい」を表していると私は解釈していますが、
「〜の公算大」としないといけないと新聞社では言っています(東京新聞「ことば言葉コトバ」、2003年10月22日付)。
これは新聞という制約の上では仕方のないことなのでしょうか。
日本語としてどうか、というのと違う問題と捉えた方がいいのでしょうか。

これからもたくさんの語例とご意見よろしくお願いいたします。

東京新聞「ことば言葉コトバ」バックナンバー


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 07日 金曜日 17:54:46)

「批判」は、「私の説についてどうぞご批判ください」は、たしかに謙遜の意(「けなしてください」)が入っているかもしれません。「源氏物語の本文を批判する」という場合は、これはべつに「源氏物語の本文はまるでなっていない」などとけなすわけではなく、どの本文がより原形に近いかを比較検討することであり、ニュートラルな用法と思います。

某私立大学では、教授が定年退職するときは、「退職」ではなく「解任」というのが正式です。これがある程度一般的な用法だとすれば、「解任」は、「責任を問われて解任された」のようなマイナスの場合だけでなく、ニュートラルな場合にも使われるということです。というよりも、ニュートラルな「任を解く」が、多くの場合、マイナスの場合に使われるということで、「批判」と同じであろうかと思います。

「ていたらく」は、「悪い、ひどいていたらく」と形容詞を冠して使われていたのが、今では「ていたらく」だけで「ひどいていたらく」の意を表し(例「大学生のていたらくが明らかになる」)、「ていたらくぶり」「ていたらくな」などのことばも現れているということを書いたことがあります(こちら)。これが一般化すれば、「ていたらく」も例に入るでしょう。


ogi さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 08日 土曜日 00:42:58)

たしかに、その例は思いつきませんでした<「批判」
「解任」もたしかにマイナスの場合に使われる場合が多いです。
「解任」の裏には「任期を決めるのは自分だ」と思っているような、なんだか日本の伝統的な考え方が映っているように思います。
「ていたらく」にはそんな広い用法があったのですね!
どんなことばがこれにあてはまるかとずっと考えているのですが、なかなか用例が思いつかなくて。

「的」「化」をつけて成り立つことばの場合は、反対の意味にするとき「無○○的」「非○○化」など、わざわざ否定を必要とする○○が、当てはまることが多いのかなと、、、思っていたのですが、今までの例を考えてみてもわかることですが、これではいまいち、いやほとんど説明できないようです。これは焦るより、用例を探し続けるしかないかな。。。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 23日 火曜日 05:51:36)

「人物」ということばがプラスイメージ(大人物)の意で用いられることがあります。

 たしかにギルビー校長は人物だった。アヴァリルが聖アン女学院に入学したときも校長の職にあり、その一学期後にようやく引退したのだが、新校長には前任者のようなダイナミックな個性が欠けており、学校の評判は、その後急速に低下した。(アガサ・クリスリティー・中村妙子訳『春にして君を離れ』ハヤカワ文庫 1973.03.31発行・1995.12.15 32刷 p.118)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 23日 火曜日 07:34:01)

「あの男は心臓だ」というのは、「あの男は強心臓だ」ということですが、これはからかいの気味が多分にあり、単純なプラスイメージではないようです。かといって、まるきりマイナスイメージでもないようです。


かねこっち さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 24日 水曜日 11:28:08)

二酸化炭素などの気体が増加することにより地球の平均気温が上昇するとする説は広く認知されているようです(異論もあるようですが)。
この「地球温暖化現象」の原因となっているといわれる、いわゆる温室効果ガスなどについて論じるときに、しばしば「寄与」という言葉が使われるようです。
たとえば、「温室効果ガスの地球温暖化への寄与度 」あるいは「二酸化炭素の温暖化寄与率」などのように。
「寄与」はcontributionの訳語のようですが、これですと言葉のイメージとしては、地球温暖化はまことに望ましいことのように感じてしまいます。
「関与」などとすればまだしもの感ありですが、いかがでしょうか。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 24日 水曜日 12:22:42)

「寄与」のことは初めて伺いましたが、この類例(または逆の例)と思われるものが別のスレッド「ああ、勘違い」にあります。「活性酸素」「冗長性」「富栄養化」など。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 25日 木曜日 09:39:30)

兵庫県尼崎市の公害の裁判で、トラックの排ガスが「大気汚染に寄与」という判決文があったと思います。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 10日 土曜日 05:14:03)

結構

「結構な御堂じゃな」というのは、「立派な結構(造り)のお堂じゃな」ということですが、それがいつしか「立派なお堂じゃな」というふうに意義変化したということを考えれば、「結構」も中立から肯定的な意味の語に変わった一例といえるでしょうか。

別スレッド・「結構」はなぜ、あいまいになったのか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 06日 金曜日 13:38:57)

アイデア
「考え、思想、観念、思いつき、着想……」という意味ですが、「グッドアイデア」という意味で使われます。上記の「理屈な」と似ています。

(FAXで)わが家の防犯。私ども六十歳後半の二人暮らし。……
伊東アナウンサー「二人暮らしなんですね」
……ガレージの車は黄色のスポーツタイプ。そして、玄関脇には若者向きの自転車を置き、大家族のように見せかけています。
国井アナウンサー「アーなるほど」
伊東アナウンサー「はー、これもアイデアですね」(NHK「お元気ですか日本列島」2004.02.02放送)
『スタンダード英語語源辞典』(大修館書店)によれば、ideaは語源的にはラテン語「(プラトンの)理念」、ギリシャ語「様子、形、性質、理想形」とあって、この「理想形」にすこしよい意味という含みが感じられます。似た発音idealとは直接には関係なさそうです。


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2003年10月20日

洗濯機(道浦俊彦)


リフォーム番組を見ていたら、ナレーターの加藤みどりさん(サザエさんの声)が「洗濯機」を、母音を無声化せずに「せんたくき」と言っていたのを聞いて、違和感を覚えました。無声化された音は、促音と区別が付きにくく、実際に発音する場合には、「せんたっき」といっているケースの方が多いのではないでしょうか?

また、そうやって音声化されたものが文字化されるときに、「せんたっき」と書かれるケースもある(つまり「言文一致」)と思います。そしてその中間にある言葉はいっぱいあると思います。この「洗濯機」はどうでしょうか?


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ずば抜けるの「ずば」(道浦俊彦)

「ずぬける」の「ず」は、「図」か「頭」かと思って辞書を引いてみると、ともに当て字で、本来はそのどちらの漢字でもないそうで、驚きました。それで、関連の「ずば抜けて」の「ずば」とは何か?が気になります。この「ずば」は何なんでしょう?擬音語でしょうか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 25日 土曜日 23:15:52)

素朴には擬音のように思われます。ただし、「擬音+動詞」という語構成の語がごくふつうに作られるかどうか、いちおう検証してみる価値はあります。

「擬音+居体言(つまり動詞の連用形と同じ形の名詞)」ならば、以下のような例が思いつきます。「どしゃ降り」「ざあざあ降り」「だだ漏り」「じゃじゃ漏れ」(これは『日本国語大辞典』になし)「どか食い」「びしょ濡れ」「がた落ち」「ずる剥け」「ごろ寝」また「ぱっと見」「ぽっと出」。もっとも、私の思いつく例はこのあたりでネタ切れです。

「擬音+動詞」は、なかなか思いつきませんが、脳みそをしぼってみます。「ぶら下がる」「すっぽ抜ける」古いところで「そよ吹く」「ほほ笑む」「(鷲が)かか鳴く」「(馬が)いな鳴く」「(雨が)そぼ降る」、また、特異例として「びしょぬれて」も。

「すっぱ抜く」は、「特ダネをスッパ抜く」の場合、「すっぱ」とは忍者の意、「抜く」は盗むであって、忍者が盗むように特ダネをとってくるということだと、よく説明されます(例、さくら銀行編『ことばの豆辞典第2集』知的生きかた文庫、柴田武『知ってるようで知らない日本語3』ごま新書。語源説の出所は〔松屋筆記・大言海〕らしい)。しかし、もうひとつ意味があって、「刀をすぱっと抜く」ことを「すっぱ抜く」とも言うそうです。こちらは素直に「擬音+動詞」と解していいでしょう(「特ダネをすっぱ抜く」も、本当に忍者と関係あるのかどうか、語構成から見て問題はないか。「素っ破のように抜く」のが「素っ破抜く」だとして、「韋駄天のように走る」を「韋駄天走る」と言えるか)。

「すっぱ抜き」は、また「ずば抜き」とも言うそうで、そうすると「ずば抜ける」との関連性が考えられます。

もっと「擬音+動詞」の例を多く挙げてみたいところですが、「ずば抜ける」が「ずばっと抜ける」ではないかという思いは強くなりました。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 01日 土曜日 09:05:15)

「擬音+動詞」は(「擬音+名詞」に比べて)一語化しにくいのか、しなくてもよいのか。
「どしゃーっと降る」は「どしゃーっ降る」と言えるが、
「どしゃーっとした降り」は「どしゃーっ降り」とは言えず、「どしゃぶり」と連濁して一語化せねばならない。

副詞など連用はト抜きが可能だが、連体ではそうではなく、一語化せねばならないことと並行的です。臨時一語を作ってみれば、「のんびりとした走り方」は「のんびりばしり」

何が言いたいのか、自分でもわからなくなりそうですが、Yeemarさんの「ぐるー回って」へリンク。

ぐるー回って


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 01日 土曜日 09:49:27)

「にたにた笑い」「くすくす笑い」「がはは笑い(ガハハ笑い)」も1語ですね。一方、「?しくしく泣き」「?めそめそ泣き」はあまり聞かれないので、下の居体言により造語力に差がありそうです。

また、「ぐい飲み」(杯のことをも言う)。「ぐい」は「ぐいっと」でしょう。「つるっ禿げ」も例に入れてよいかどうか。「つるつる頭」と同じく、「禿げ」に動詞の意識がほとんどなくなっているならば、例としては不適。

「擬音+動詞」の複合語の例は、なかなか追加例が見つかりません。「情態副詞+動詞」と見かけ上区別がつきにくいので、作りにくいのでしょうか。仮に作るとしても、「ぶらぶら下がる」を一語化させるためには、そのままでは「情態副詞+動詞」と区別がつかないため、「ぶら下がる」のように、「ぶら」を一つ除いて形を変えなければならない(これは「擬音+居体言」の場合もある程度まではそうですが)。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 02日 日曜日 20:58:33)

「擬音+居体言」は、「ずぶ濡れ」「ざく切り」「ぶつ切り」「べた塗り」「べたぼめ」「べた惚れ」「微酔(ほろよい)」「ぐるぐる巻き」「よちよち歩き」も。「ばら売り」は(ばらっと売るのではないので)違いますね。

「擬音+動詞」のほうは、「ちょん切る」。「ぶん回す」は「ぶんぶん回す」ではなく「打ち回す」でしょうか(「ぶん殴る」「ぶん抜く」も「打ち―」か。あるいは「分捕る」もそうか?)。

「かち割り」「かち割る」は「搗ち―」で、「かちんと割る」ではないのですね。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 02日 日曜日 22:11:47)

方言だけれど「ちょちょ切れる」はどうだろう、と思っていましたが、「ちょん切る」には思い至りませんでした。

ちょちょ切れる


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 11日 火曜日 19:07:11)

すみません、11月2日に岡島先生が書き込まれた分の文が見られないのですが、どんな内容だったのでしょうか?


posted by 岡島昭浩 at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年10月17日

NHK「気になることば」週間報告(Yeemar)

NHK「お元気ですか日本列島」の中で、16:45ごろから「気になることば」が放送されており、若者ことばやことばの正誤などを取り上げています。担当・梅津正樹アナウンサー。今までのところ、おおむね若者ことばには厳しい。

内容は「皆さんご承知」という感じのものが多いのですが、担当アナウンサー、司会アナウンサーらの発言、投書者の意見などからうかがえる、ことばへの好悪などの評価はいささか興味深いものもあり、記録に足るものと思います。別スレッド「視聴記録」とは別立てで、できるだけ記録しようと思っています。

著作権の問題もあり、番組をまるごと再現ということはしませんが、興味深いコメントや、すでに公表された各種調査の数字等は、いささか詳しく記してよいのではないかと思います。

私は、できるだけタイマー録画していますが(1回ごとに上書き)、忘れたり失敗したりすることもあり、完全に把握しているわけではありません。(きょうも、ビデオには何も映っていませんでした。タイマー録画の訓練が必要です)

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2003.09.30(第1回)カタカナ語は好ましい?
 詳細は「視聴記録」に。

 この間、何回かあった模様。

2003.10.6〜7〔よろしかったでしょうか〕
 詳細は「名古屋で聴いた完了態?」に。

2003.10.08〔〜になります・〜からお預かりします等〕
 詳細は「私の「一万円から」」に。

2003.10.09 「弱冠35歳」は正しい?

2003.10.10 ジュッパーセント? ジュッパーセント?
 NHKではどちらでも可能とのこと

2003.10.14 「とか」とか使います?
 とか弁
 投書「水とかってありますか?」
 投書「変な使い方をされるようになってはや20年くらいたつ」(そのとおり、20年前から)
 「(今)学生とかやってます」
 辞書には近年の用法として載る
 ある調査(文化庁?)「今の人間関係にある・お互いを束縛する重い関係よりも相手に寄りかからない軽い部分的なつき合いを望む人が増えている・軽い対人関係の志向と関連している表現ではないか」
 とか弁を使う若者は対人関係が広いという調査

2003.10.15 “とか弁”その心は…?
 文化庁調査H12年1月「鈴木さんと話とかしてました」言う16.2% 言わない82.4%/16-19歳48.2%「言う」60歳以上7.4%/30代は4人に1人ほど
 投書「私は26歳女性、学生のころ〈とか〉を使っていたが、〈不安だから〉と気づいて意識してつけないようにした」
 投書「(21歳学生女性)たしかに使う、言い切るのは勇気がいる」
 断定しないことば=美徳・やさしさの現れでは
 「ビミョー」断定しない、若い人が発見したことば
 ビジネスの場であいまいでは仕事が前に進まない

2003.10.16 “わたし的”ってどんな的?
 2000年流行語大賞のトップ10入り
 放送文化研究所・平成8年調査―「色的に派手な車が通った」50.1%、「この服は長さ的にはちょうどよい」46.1%、「気持ち的には理解できる」33.6%
 日本語は形容詞が少ない言語なので、明治時代に翻訳家が「健康+な」「豪華+な」、ある翻訳家は「〜的」を用いた
 “概念”に「的」をつけるのはよい、「家庭的」はいいが、「家的」はだめ
 「○○系」―「渋谷系」「(食事は)何系の店がいい?」

2003.10.17 〔“全然大丈夫…”は変な表現?〕
 見逃し。見たかったのですが……

なお、タイトルの〔 〕は画面上で確認していないもの。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 17日 金曜日 20:25:55)

> 2003.10.10 ジュッパーセント? ジュッパーセント?

これは変ですね。どちらかが「ジッパーセント」なのですが、もう上書きしてしまったので分かりません。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 17日 金曜日 20:28:59)

> 2003.10.16 “わたし的”ってどんな的?
> 放送文化研究所・平成8年調査―

上記に示す百分率は、たしか「違和感を感じる」人のパーセンテージです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 17日 金曜日 21:36:52)

番組ホームページはこちらですが、内容のサマリー等は載っていないようです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 24日 金曜日 21:47:42)

今週は、「全然」のあとは肯定表現か否定表現か、という論争があり、見ものでした。文部科学省の話として「戦前から『全然〜否定』と教育している」という証言があったのはおもしろく思いました(文部科学省のだれがどういう表現で言ったのか?)。しかし、そう教える根拠については「分からない」のだそうで、アナウンサーたちも頭を抱えていました。ちょっと口ばしを挟みたくなる展開です。

2003.10.20 “飛ぶ鳥?”後を濁さず
|〔先週の“全然”への反響〕
| 明治〜昭和初までは「全然〜肯定」「〜否定」両方あった
| 56通の反響、3分の1は「肯定でも良いのでは」
| 投書(大正14年生)「漢文世代の意識から『全く然り』、肯定的に近い」
| 投書(57歳)「中3国語の授業で教え子の手紙『僕は全然元気です』」
| 投書(74歳)「否定続くと習ったような気が」
 混交表現「飛鳥{とぶとり}もあとを濁{にご}すなに候{さぶら}べば」(樋口一葉・ゆく雲)
 渡り鳥が去った後は巣はきれいで糞もない
 鷺ではないかとの意見
 「押しも押されぬ」「精も根も疲れ果てる」
 「人山の黒だかり」

2003.10.21 “情けは人のためならず”
 「住めば都」「かわいい子には旅をさせよ」などの意味の取り違え

2003.10.22 “気の置けない人”
 文化庁H14年調査「理解○44.6%、×40.1%」
 「気が許せない・気が知れない」などの類推か
 「置く」は距離を距てる
 「気の置ける人」も辞書に
 誤解が人間関係に響く「他山の石・腐っても鯛・枯れ木も山のにぎわい」

2003.10.23 私には“役不足”?
 NHK調査(H5)正しく理解30%
 「不足」が謙虚に思われるせいか
 枯れ木も山のにぎわい「私も枯れ木の一つで……」はOK
 「わらにもすがる」「おぼれる者はわらにもすがる」→「あなたにわらにもすがる思いで……」は×
 学校・家庭で教えない
 投書「『気の置けない人』私は嬉しいが夫は嬉しくない」
 「全然〜肯定」に賛否両論100通越える

2003.10.24 “全然〜”どっち派?
 「全然〜肯定・否定」大論争
 120人以上から投書、うち「全然〜肯定表現」49人:「否定」77人。20代=6:0、30代=7:2、40代=3:5、50代=6:11、60代=5:13、70代以上=15:35(合計数字は、直前の到着分を追加したものか)
 投書(岐阜県昭和24年生・女)「小学校で(否定と)教わった」
 投書(草加市78歳・男)「陸軍幼年学校・航空士官学校卒。否定で習った」
 投書「母83歳は戦前・戦中に否定で教えていた」
 投書(深川生まれ70歳・男)「子どものころから(肯定を)ふつうに使う。大人になり注意され驚いた。漱石は下町ことばを使うので地域により違うか」
 投書(大分県31歳・女)「現代国語の文章で、先生が『全然〜肯定は昔から使う』と教えた」
 投書(八王子市大正14年生・男)「漢文世代の意識から『全く然り』、肯定的に近い」
 雑誌「太陽」データベース(国立国語研)では「全然休息しろ(明34)・全然誤解なり(明42)・全然皮を脱ぐ(大6)・全然暗中模索だった(大14)」
 『国定読本用語総覧』では「全然移住せし例は(明43)・全然移住するは(同)・算木によるむづかしい数学は全然忘れられてしまつたのであつた(昭8)」
 文部科学省談「戦前から『全然〜否定』と教育している」
 教育現場でなぜ「全然〜否定」と教えるのか?――根拠分からない
 国立国語研究所「研究課題だ」


岡島 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 24日 金曜日 22:32:18)

NHKラジオでも、ほぼ並行して同じ話題を取り上げているような気がいたします。時間帯はもう少し早く三時台であると思います。
ちゃんと聞いてないので確実なことは言えませんが。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 31日 金曜日 17:42:51)

NHKラジオ第1で15:45から「気になることば」を放送していますね。聞いてみると、こちらも梅津アナウンサーが担当し、内容もほぼ同じであるようです。その1時間後にはテレビスタジオに移り、ちょうど同じ授業を2コマ続けて行うような感じで話す形です。その場の流れにより、多少情報の増減はありますが、選ぶ投書なども一致しているようです。

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2003.10.27 カタカナ語でリストラされる!?
 リストラクチャリングは「再構築」→リストラ→人員整理、解雇
 「首切り」は強烈だが「リストラ」は人ごとのよう
 連合の意見「『リストラ=解雇』はゆゆしい、労組は経営をリストラクチャリングするため幅広く協議しているが、労組の取り組みが正確な理解得られず、不本意」
 経団連「正式文書では『リストラ』使わず、使うならば『再構築』の意味で」
 マスメディアの責任も
 意味のずれることば「アルバイト」(仕事・労働)、「ダイエット」(食事療法)
 「グローバルスタンダード」十数年前から使われる、欧米の書物にはあまりない、日本の経済界で使われる
 あいまいな定義で会話するとかみ合わない
*関連
リストラされる」(ことばをめぐるひとりごと)
アルバイトの語誌」(この会議室)

2003.10.28 ファースト?フード
 NHK調査(H14年)ファーストフード:ファストフード(%)20代=86:14、30代=91:8、40代=88:10、50代=79:11、60代以上=45:12
 外資参入が許可され1970年に一気に入る
 イギリス英語では延ばす
 アナウンサーもかつて「ファーストボール」(直球)と言っていた
 ファスナー以外は延ばす
 最近の動き「スローフード運動」→対比的に「ファストフード」言うようになるか?
 店自身は「クイックサービスレストラン」

2003.10.29 カタカナ語で厚化粧
 埼玉県74歳・女「むずかしい横文字多い、独り暮らしで訊く人もいない」
 4つに分類する人も(柴田実氏?)――ペンキ語・ハリボテ語・詐欺語・芋づる語
 ペンキ語=新しい感じを出そうとする。
 〈先週金曜の新聞広告(住宅)の例〉「セキュリティ&プライバシー」「「スタイリッシュ」で「快適」なライフスタイル」「緑と水のソサエティ」「ここだけのビュー」
 ハリボテ語=中身をより大きく見せる(例、グランドリニューアルオープン、アンダーウェア)
 〈新聞広告(住宅)の例〉「ビッグプロジェクト、ファイナルステージへ」「アートする邸宅」「シンプルなカラーコーディネートとあくまでもミニマムなインテリア意匠。」
 神奈川・男「『マンション』は集合住宅のことをいうが大豪邸では?」
 横浜市・男「ワンルームマンションとは?」
 相撲では「白星スタート→初日白星です、ピンクのタオル→桃色の手ぬぐいで(?)」*同日のラジオでは、アナが見た車内広告が紹介されていた:「ワントーンコーデ シティー派の大人リッチ」
*参考「「ふだつき」カタカナ語の分類法」〔放送研究主任研究員 柴田実〕(放送文化研究所・ことばウラ・オモテ)

2003.10.30 増殖を続けるカタカナ語
 詐欺語=何となく新しくみえる
 例、アカウンタビリティ(説明責任)、モラルハザード(倫理の欠如)
 芋づる語=続けて使ってしまう
 「ベージュ(らくだ色)のオーソドックス(正統派)なコート(外とう)は永遠のベーシックアイテム(基本的品目)」
 「クールな(格好がよい)レザー(皮)とラブリーな(かわいい)バッグ(かばん)のミックスコーディネート(調和した組み合わせ)」〈最近は「コーデ」とも〉
 「リッチ(豪華)なファー(毛皮の)襟でフェミニンさ(女らしさ)をアピール(訴える)」
 ブラウザー〜データファイル〜ソフトウェア……芋づる式

2003.10.31 お答えします!カタカナ語
 番組開始以降、総計の投書1,070通
 「ブラウザー」とは?
 投書「ブラウザ=情報表示道具」
 投書「中国語では『瀏覧機』(ざっと大まかに見る)」(瀏覧器?)
 投書「レシピとは何か教えてください」
 投書「『シェフ』(総料理長)が『コックさん』の意味で使われている」
 投書(京都・男)「日本語語彙として受け入れればよい。日本語は新語、造語を容認しやすい」


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 07日 金曜日 17:54:57)

2003.11.04 すごいが気になる
 「すごい」を使うとき(渋谷の若者)〔初めてVTR映像使用?〕「友達の曲がカッコよかったとき」「自分が驚いたとき」「メールの返信で『それすごすぎじゃん』「たわいない話で」「テレビの人に会ったとき」「意味がなくても」「すごい眠い」
 投書(22歳男)「古語では『すごし』はおそろしい」
 「言わん〔ママ〕方無くすごき言の葉(源・帚木)」「あられ降り荒れてすごき夜のさまなり(源・若紫)」
 大正〜昭和初期の辞書語釈「さびしい、おそろしい」
 中山由五郎他編『モダン語漫画辞典』(昭和7〔ママ〕)実物紹介。「サボる」等載る。「すごい」は「賛美の最上級に用いられる語であるが「すげえ」と発音した方が凄えようだ。/Kのアミ〔恋人〕見たか?とてもすげえぞ…」
 江戸時代から俗語ではいい意味でも使う→一般化
 感嘆詞のよう
 投書25通「『すごいおいしい』は『すごく』ではないか」

2003.11.05 すごい?すごく?
 投書(横浜市・女)「『すごいよかったです』は違和感」
 投書(宇都宮市60歳・女)「耳に障る」
 VTR(渋谷の若者)「すごい可愛い服」「すごいむかつく」
 文化庁調査(H9)すごい速い「言う」全体43.1%「言わない」全体55.5%、16-19歳女性78.5%、男性60歳以上25.1%
 VTR(渋谷)「『すごく』は使わない」(女)「『すごくおいしい』は硬い」(男)
 投書(世田谷・男)「『〜ごく』とg・kが連続するとまどろっこしい」
 専門家「理由分からない」
 今に始まったことではない。「おそろしい高へ」「おそろしい高いもんだ」「途方もない高い」(『辞典〈新しい日本語〉』)
 「わー、おいしい」などと同じく感嘆詞として「すごい!おもしろい」
 投書(長野県千曲市・女)「祖父は『すごく』『すごい』区別を注意するよう言っていた。今考えると『すごい』を形容詞と捉え感嘆詞と認められなかったのだろう」
 「超むかつく」等、強調はすぐ古くなる。今は「超」でなく「激むかつく・マジむかつく」
*参考「大したたまげた」(ことばをめぐるひとりごと)

2003.耳ざわりがいい!?
 投書(埼玉県60歳・男)「『耳ざわりのよい』は『聞こえがよい』というべし」
 投書(三重県43歳・女)「『耳に心地よい』という」〔アナ「『耳にやさしい』でもいい」〕
 NHK放送文化研究所調査「おかしい」1989年→59% 1992年→47%
 文化庁・国語辞典調査「口」→触、「手・肌」→触(障も)、「耳・目」→障、ただし「耳」を「触・障」とする辞書も
 「足ざわり」も、「足触り(触覚)」「足障り(じゃま)」両方

2003.11.07 監督!ゲキを飛ばしてますか!?
|投書(世田谷)「触は直接ふれる、障は器官から入る情報について使う」
|投書(埼玉21歳)「耳触りもアリでは。ヘッドホンの装着感」
 投書(名古屋市・男)「スポーツニュースで『王監督が、チャンスがないわけではないので頑張ろう、と檄を飛ばした』と言っていた」
 夕べ町で30人に聞く「主張を知らせる」2人、「活を入れる」28人
 緊急アンケート30人(教育フェア/スタジオパークの客)「劇」4「激」19「檄」7〔本当に緊急らしくホワイトボードに手書き〕

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11.07の放送では、この後、「秋に聴きたいこの1曲」として、題名が分からないという曲を含め投書何通かあり。「遠い山から吹いてくる」(野菊)、「夕空晴れて秋風吹き」(故郷の空)、「わたしはまっかなりんごです」(りんごのひとりごと)等。曜日担当のアナウンサー(1967年生)は、いずれも知らないそうで、意外のようでも、当然のようでもある。「りんごのひとしごと」と何度も読んでいたので、本当に知らないのでしょう。傍らの梅津アナウンサーはいずれも知っていました。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 28日 金曜日 17:26:37)

大相撲中継などでずいぶん間があきました。

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2003.11.27 使いすぎじゃないですか
 文化庁調査(H9)「年末はどこの店も込むじゃないですか」普通59%、親しみ17%、押しつけ14%、唐突7%/「私ってコーヒーが好きじゃないですか」普通10%、親しみ6%、押しつけ26%、唐突46%
 VTR(渋谷若者女)「敬語っぽく聞こえるけど押しつけがましい、使わない」/(若者男)「初対面でいわれても。人間関係あれば問題ない」
 若者の中には丁寧な言い方と思っている人も
 VTR「説得に自身がないときに」

2003.11.28 便利でクセになる? 半疑問
 半疑問・半クエスチョン・擬似疑問・文中疑問などとも
 VTR・都内で仕事をする野々村純子さん(20代)多用する
 投書(神奈川40代・男)「30代から60代まで、女性が多いようだ」
 スタッフで理由考えた(1)反応確かめる(2)自分に注意を引きつける(3)会話の効率化〔助詞などの語尾を半疑問に置き換えるということか〕
 「ひところより減っているのでは?」「意識して使わないようにしているのか?」


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 30日 日曜日 21:51:26)

なるほど、大相撲中継がテレビでは1600ごろからですから、「気になることば」は休みだったのですね。

ラジオで3時台で、まだ大相撲中継に入ってないので、古いものの再放送をしていました。

無精な私はきちんと聞いておらず、情けないことですが、「よろしかったでしょうか」を聞いたと思います。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 05日 金曜日 17:44:18)

今週は井上史雄氏特集という感じでした。私の感想・疑問の注記〔 〕を増やします。

4日は臨時の内容が入ったためか何かで、「ことば」を放送する余地がなくなりカットされた模様です。ラジオでは放送されたでしょうから、今後、どこかで調整しなければラジオとテレビの放送スケジュールがずれてしまうのではと、要らぬ心配をしてしまいます。

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2003.12.01 “なにげに”の誕生
 伊東敏恵アナ(1972生)「アナウンサーとしては言わないが、ふだんは『なにげに可愛いじゃん』とか言ってしまう」
 文化庁6年前調査、10代・20代で30%ぐらい
 2001年出版の辞書に「なにげに」載る、「『何気ない』と同意、若い世代用いる」
 「うれしい→うれしげに、かわいい→かわいげに」の類推か
 国井雅比古アナ「『かわいげに』ってことばある?」梅津正樹アナ「最近言うんです、『かわいげにこんなことして』と」〔ちょっと話がおかしいようだ〕
 群馬・埼玉等「〜そう」の意で「〜げ」を使う――2000.07.02放送「ふるさと日本のことば」(群馬県)で「まっさかうまげだがね」(非常にうまそうだ)
 言語学者・井上史雄さんによれば「こういう方言が東京に入ったのでは」――「よさげ」群馬・埼玉のことば、1990年代後半から東京の若者が使う、「なにげ」も元は群馬・埼玉の若者ことばか
*参考スレッド「何気に
*参考「新方言辞典稿」(井上史雄氏)の「

2003.12.02 “なにげに”の進化
| 投書(群馬15歳・男)「『ほしげ(ほしそう)』『見たげ(見たそう)』と言う」
| 投書(静岡59歳・男)「子どもの時代から使っていた。『そうそうなにげにしてしまうよ』」〔詳細知りたし〕
| 投書(香川50歳・男)「香川方言でも『〜げな』を使う。『面白げな番組』『重げな荷物』」〔私(香川県出身)も使う〕
| 投書(大田区70歳・女)「新潟でも『なにげ』『うまげ』『よさげ』」
| 桜井洋子アナ「新潟では『なにげに(何故に)そう言ったの?』と言う」
| 投書(東京・男)「『めんどくさい→めんどい、気持ちいい→気持ちい〔言うのだろうか? ウェブを検索すると多少あるが誤入力か?〕、気持ち悪い→きもい』などの簡略化とみるほうが自然」
| 投書(千葉38歳・男)「『なにげない』の省略だ」
 投書(神奈川19歳・女)「『なにげに可愛い』は『けっこう可愛い』の意味だ」
 VTR(渋谷若者女)「人が可愛いと思っているかどうか分からないから、『なにげに可愛い』と言ったほうが押しつけがましくない」「服を見ていて、友だちが『いまいちだよね』と言うとき『でもなにげに好きなんだけど』と言いたいことを和らげる。ずるいが使う」
 あいまい表現の一つか

2003.12.03 うざいは若者ことば?
 =うざったい・うざっこい(「うじゃうじゃ・うざうざ」からか)
 「うざったい」東京外国語大学・井上史雄教授調査(1983年)東京で一番使う、とりわけ西部で老年層も使う、都心では若者だけ――「東京の西のほうの方言」
 多摩地区老年層「濡れた畑に入った感じ」、多摩地区若年層「不快だ、いやな人」、都心若年層「面倒だ、わずらわしい」
 20年前、ニュータウン開発・東京西部に大学が移転→都心に移る→全国に
 歌にも11年前〔1992〕、T-BOLAN「じれったい愛」で「じれったい オマエの愛が うざったい程 痛いよ」
 投書(宇都宮市42歳・男)「『うざい』は携帯メールの文字数制限のせいでは」
 井上教授の調査では多摩地区の若者が短縮したという、そのころならばポケベルの字数短縮によるか〔本当?〕
 短縮形「きもい」「むずい」
 宮川泰夫アナ「ことばが間接化して喜怒哀楽に向き合わない」「『きもい』など人間関係をマイナスに受けとめている」「元気になるような若者ことばはないのか」
*参考「新方言辞典稿」(井上史雄氏)の「

2003.12.04 休み

2003.12.05 じゃんの来た道
 〜ではないか→〜じゃん(か)
 投書(静岡32歳・女)「神奈川出身だがハマ弁だと聞いた、ハマっ子が使う」
 投書(神奈川38歳・女)「ジャンことばは神奈川方言と聞いて育った」
 東京外国語大学・井上史雄教授の調査では「戦時中、静岡の空襲についての記述の中に『じゃん』を使った人」←昭和初期「浜松で繊維工場の女性が盛んに使っている」
 他の調査では長野・山梨でも少なくとも100年前には使う
 50年かかり、東京では戦後使われる
 投書(愛知50代半・女)「知多半島に住むが『そうじゃんねえ』と自然に使う」(母は使わないという、では知多半島では50年ぐらい前から?)
 横浜ではいつごろか資料なし
 「あるじゃん」の使用分布(1983年井上氏調査)1940年代生では東海北陸関東中心、1970年生では関西除きほぼ全国に、関西では「〜やん(か)」があるので空白地帯
 投書(栃木県76歳・男)「『いいじゃん』は強い励まし、『だめじゃん』は愛情を感じる」
 肯定的な投書多い
*参考「新方言辞典稿」(井上史雄氏)の「


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 12日 金曜日 17:28:45)

公正報道のためか、辞書等の出典を挙げてくれないのが困ります。書籍はあるていど見当がつくとしても、「ある辞書にはこう書かれています」と言われると、その「ある辞書」を特定するのが少々おっくうであります(必要となったときは、調べるにやぶさかではありませんが)。

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2003.12.08 あげる派? やる派?
 1952年に動物園で「えさをあげないでください」〔出典はどうやら『言語生活の目』〕(今回電話で聞くと、文面はまちまち「やらないでね」「あげないでね」)
 NHK放送文化研究所(2002年)「花に水をあげる」おかしくない61%、おかしい35%;使う59%
 伊東敏恵アナ「自分の子どもに『お菓子買ってやろうか』はへんだと思う」
 会社では上司が部下に「あげる」部下が上司に「さしあげる」
 「あげる」は丁寧語・美化語に変わりつつあると研究者――辞書に「1970年代前半までは丁寧語『あげる』は誤用、その後次第に定着」
 スポーツ中継「これ以上1点もあげられません」はおかしい

2003.12.09 させていただきます
 文化庁調査(H8)明日は休業させていただきます「おかしい」7.1%、これで会議を終了させていただきます8.1%、この商品は値引きさせていただきます18.3%、ドアを閉めさせていただきます18.8%
 NHK日本語センター・NHK入社面接セミナー〔で使用した(悪文の)例?〕「私が御社に入社させていただきたいと思う理由は、3年前に御社の国際線を利用させていただきまして、ヨーロッパへ旅行したのですが、慣れない旅で気分が悪くなりました時に、客室乗務員の方に大変ご親切にしていただき、そのことを忘れることができません。私も人のために尽くさせていただくことを生き甲斐にしたいと思っております」
 謙譲語ではなく丁寧語になってきている
 言語学者・井上史雄さんは「上下敬語→左右敬語になっている」

2003.12.10 続 させていただきます
 敬語〔というもの〕は関西から生まれ全国に広まったという説が有力〔?!〕「させていただく」もその1つ
 司馬遼太郎『街道をゆく』「『させていただきます』は浄土真宗から来た、すべては阿弥陀如来のおかげ、近江商人がよく使った」
 二重敬語「お値引きさせていただきます」「お呼びさせていただきます」
 「お呼びさせていただいてもよろしいでしょうか」
 言語学者・井上史雄さんによれば「敬意低減の法則」がある〔井上さんに拠らなくてもある〕→敬語をつけ加える
 プラスの若者ことばはあるか
 投書(24歳・男)「わざとらしい飾り立てたことばに嫌悪感。私もそう。夢のあることばを口にすることは現実の問題から目をそらしてしまうことに気づいている」
*参考スレッド「「させていただき・・・」の連呼
*参考「ことばの海」「「させていただきます」続貂」(岡島さん)

2003.12.11 とんでもございません
 「とんでもハップン」1950年代にはやった〔獅子文六『自由学校』1950年〕
 投書(岡山市・女)「『とんでもないです』だけでは何かもの足りない」
 投書(神奈川・男)「時代劇で浪人に『とんでもござらぬ』と言わせていた」
 文化庁調査(H7)「気にならない」78.7%「気になる」17.9%
 「ない」の分類 ・ある←→無い(情けない)/・打ち消し(かなわない)/・強調(せわしない)――「とんでもない」も強調
 語源「途方もない」ならば「とんでもありません」も可
 文化庁〔出典はどうやら『言葉に関する問答集』14〕「相手のことばを強く否定するあいさつ語の用法あり。今の世の中『とんでもないことでございます』が使われるかどうか疑問」「不適切と退けるのは好ましくないと言える」

2003.12.12 気「お」つけましょう
 投書(広島72歳・女)「料理番組で『お粉(こな)』、ていねいすぎる」
 投書(東京40歳・女)「食品パッケージ裏に『お召し上がり方』居心地の悪さ」
 NHK調査(1996年)(ビール・酢・正月・みかん・台所・なべ・金・ソース・酒)「金」―8割、「正月」「酒」―7割が「お」つける
 女房詞に「おでん・おなか・おこわ」
 意味が違うことば「おひや―ひや」、「おにぎり―にぎり」
 スタッフ談「日本語に堪能な外国人が『子どもと、もちゃで遊ぶ』」


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 19日 金曜日 17:09:19)

今回は見逃しが1回あり、NHKのオペレーターをわずらわせました。そこまでしなくともと思いますが。あまり見逃しが増えるようであればこの企画は頓挫です。

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2003.12.16 梅津さんってやばい!
 伊東敏恵アナ(1972生)「妹に『あの人かっこいい、かなりやばい』と言う」
 投書(茨城・男)「昔は隠語だった、今は男女学生、アナウンサーも」
 江戸時代に「厄場(やくば=牢屋)→やば」、上方で使われる、戦後広まる
 VTR(渋谷若者・女)「ちょーかっこいい人を『やばい〔、〕かっこいい』〔「、」で切れているかどうか微妙〕」、(若者・男)「友だちと服買いに行ったとき、『やばい〔、〕よくねー?』とか」、(若者・女)「食べてて『これまじやばい。おいしい』」
 1998年には〔すでに〕プラスの意味で使われていた〔説の出所は塩田雄大氏?〕
 『現代用語の基礎知識』2001年版「魅力がありすぎる。」、2002年版「魅力がありすぎる。すごくいい。」、2003・2004年版「あぶない・最悪な状態にも、すごくいいとき・最高の状態にも使う。意味は文脈によって決まる。」
 放送文化研究所・塩田〔雄大〕研究員によれば「『やばい』の対象が自分の外だったものが、やがて自分の内側、心・感情に向いた」
 投書(22歳・男)「『すごい暑い』の上級活用として『やばい暑い』がある」
 VTR(渋谷若者・男/女)「『すごい』より『やばい』が上」
 ほかに「マックス○○」「おに○○」〔これは前からではないか〕

2003.12.17 〔世界の“やばい”〕
 〔見逃しました。ウェブでは「日本語ばかりか外国語にも見られるようになった「やばい」について考えます。」とあります。NHKに電話をかけてオペレーターの方に伺った話では、別に日本語「やばい」が世界に輸出されたわけではなく:
 ――世界でも日本の「やばい」のようなマイナスのことばがプラスの意味で使われている。例、韓国語「チュギダ」(殺す)が「かっこいい・いかす・すごい」、「ヨプキジョク(猟奇的)」(怪奇・異常な)が「かっこいい」、英語「bad, cool」が「とても素敵で格好いい」、中国語「クーナン(酷男)」(みにくい男)が「格好いい男」。韓国映画「猟奇的な彼女」は「とてもいかしている素敵な彼女」。このように逆説的なことばづかいが蔓延している。〕

2003.12.18 ごっつええやん!関西弁
 東京の若い人が関西弁使う「めっちゃむかつく」「ごっつ○○」「やめてえな」
 パソコンソフトにも関西弁を変換
 けったい・いちびり・いらち・はんなり・ほっこり・なんぎ
 NHK大阪・比留木剛史アナウンサー「強いことを言っても丸く聞こえることば。若者の、ものを言いきらない部分とマッチしている」
 「けど」の文化――「お釣り、足らんように思いますけど」〔春木一夫『けどの文化 関西人の意識構造』日刊工業新聞社 1980という本がある〕

2003.12.19 「じゃん」の来た道〜第二弾〜
 53通の投書
 投書(山梨県春日居町80歳・女)「『じゃん』を子どものころから使っていた」
 投書(品川区1933年生まれ・女)「1944年、山梨に学童疎開。友達から教えられ、さかんに使った」
 NHK甲府ローカル番組「いいじゃん山梨505」
 NHKドラマ「夢見る葡萄」第1回台本では「じゃん」が10箇所。「あっ、また来てるじゃん」
 小林是綱氏によれば、明治38(1905)年『風俗画報』に「甲斐方言考」(三田村鳶魚)。「ジャン……はジャナイカというに同じ。処によりジャンと言わずしてジャァとも言えり」
 投書「『甲州の絹商人が横浜に来て売り買いで使いった』と本で読んだ」
 投書(東京都・男)「父から聞いた話では山梨から絹の道(八王子経由)を通じて伝わった」
 投書「かつて甲府市に住む。市政100周年のパンフレットに『山梨県では養蚕が盛んだったため、横浜に絹商人として移り住んだ。横浜では当時山梨県人が8割を占めていた』」
 「絹の道」が「じゃんの道」だった?
 江戸時代はどうか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 23日 火曜日 21:12:03)

> 2003.12.18 ごっつええやん!関西弁
>  東京の若い人が関西弁使う「めっちゃむかつく」「ごっつ○○」「やめてえな」

これについては下記の文献を参照。

陣内正敬(研究代表)『コミュニケーションの地域性と関西方言の影響力についての広域的研究』科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))研究成果報告 No.1−No.3 2003.3


masakim さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 24日 水曜日 07:32:45)

「関西方言の影響力についての調査(2000〜2002)」は

http://home.hiroshima-u.ac.jp/hoogen/kansa/

で読むことができます。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 26日 金曜日 17:28:22)

投書で多かったテーマベスト5のまとめでした。本編に対する「追記」という感じですが、「全然〜肯定」の例を多数紹介する投書など、興味深く思いました。

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2003.12.22 気になることばベスト5・4
 先週金曜まで41回の放送で投書累計1,200通
 ベスト5「じゃん」75通
 投書(町田市・男)「生まれ育ち横浜。山梨から『絹の道』を通ってきた説に納得」
 投書(栃木県・女)「シルクの道の終点地ペルシャにあることをイラン人の夫から学ぶ。ペルシャ語で『ジャン』は『ダーリン』とか相手を尊敬するときに使う」
 ベスト4「なにげに」77通
 投書(秋田県17歳・男)「(1)案外・意外と『お前なにげにいいやつだよな』(2)気がつくと『ところでさあ、なにげに寒くねえ?』(3)知らぬ間に・ちゃっかり『お前、なにげにおれのコーラ勝手に飲んでただろう』」
 投書(埼玉県37・男)「15年ほど前に宮城県の会社先輩が使う。仙台弁で『意外と』の意味だそう」
 京都・徳島・愛媛などで使うと投書
 投書(男)(古典から国語学者の文献まで調べて報告)「香川県観音寺市三豊地区の人のホームページに『近辺でしか通じないことば』として『なにげに:思わず。深く考えないで。』」〔以下のページか:さんじらこ超方言
 投書(東京都・男)「『きもい』などと同様の短縮表現か」
 投書(青森県43歳・女〈予備校講師〉)(実体験からの仮説をレポート)「短縮ではないか」
 中道知子助教授より雑誌郵送=黛美和「「なにげに」の意味」(『大東文化大学日本語学科年報』5 1997)

2003.12.23 休み

2003.12.24 気になることばベスト3
 ベスト3「アルバイト言葉」82通
 「〜になります」「〜からお預かりします」「〜のほう」
 投書(長崎市50・男)「かつて消火器詐欺が『消防署のほうから来ました』」
 宮川アナ「顔も見ずに『いらっしゃいませこんにちは』はいやだ」
 投書(仙台)「不快感を覚える、テープに録音したよう」
 投書(千葉県九十九里町・男)「客が返事を返事をしないからだ、返事を続けていると目を見て言ってくれる、だめなら店を変えては」
 投書(女性)「万引き防止、あなたが店に入ったことを確認しました、『こだまことば』」〔既出 2003.10.09〕
 NHK放送文化研究所(2年前)「よろしかったでしょうか」ていねい12%、「よしろいでしょうか」と同じ17%、何となく違う22%、変な言い方だ44%――方言(北海道等)で使う
 投書(宮城県30代・男)「北海道出身で仙台に住む。畑正憲の文章〈道東の警察官は「どうも警察でした」と訪問〉、妻の父(山形県)は『どうも○○でした』と名のる」
 投書(鹿児島・主婦)「違和感感じるが、自分でも『このハンカチでよかった?』『ご飯これぐらいでよかった?』と言っている、親近感とていねいがドッキングか」

2003.12.25 気になることばベスト2
 ベスト2「全然大丈夫」137通
 投書(57歳・女)「昭和33年ごろ、友だちと『全然おいしい』新しいおしゃれなやんちゃ語として使っていた」
 昔もあった、明治の文豪も使っていた、末田正雄アナウンサーの子どもも「昔も使っていたんだって」と反論、雑誌『太陽』「全然休息しろ」(明治34年)等〔既出〕
 学校教育で「全然〜否定」と教育、77通は否定を支持
 投書(西東京市・男)「明治・大正・昭和の作品にも『全然〜肯定』の例:『全然意志の外にあるのであるが』(西田幾多郎〔梅津アナ「いくたろう」〕『善の研究』岩波文庫 p.27)、『全然別種のものであろう』(和辻哲郎『古寺巡礼』岩波文庫 p.100)、『全然標準を異にしているのでしょう』(芥川龍之介『河童』新潮文庫 p.74-75)、『全然不当としてしりぞけられるが』(寺田寅彦「物理学圏外の物理学的現象」『寺田寅彦随筆集 第三巻』岩波文庫 p.124)、『全然新しい幕が』(太宰治「パンドラの匣」『太宰治全集7』筑摩書房 p.271)」
 末田アナ「全然問題ない、だから大丈夫→全然大丈夫」ということか?〔必ずしもそうではあるまい〕
 投書(沖縄県)「若者は短縮語が好き、『全然問題ないよ、オッケーだよ』が『全然オッケー』」
 投書(東京都・男)「肯定の中に否定が隠れているのでは。『全然問題なくよかった→全然よかった』」
 投書(岡山市80歳・男)「数十年前までは否定で結ぶ『とても〜できない』が今日では肯定で使う、ことばは変わる」
*参考スレッド「ぜんぜん大丈夫?

2003.12.26 気になることば No.1
| 西田幾多郎を「いくたろう」と読んだことについて投書続々、西田についておさらい
 No.1「カタカナ語」166通
 投書(英会話教師)「相手に分からぬ『アイデンティティー』『コンセンサス』『ステータス』。どうせなら全部英語で」
 国立国語研究所、4月・11月に日本語に置き換える目安
 11月に47語…タスクフォース=特別作業班、エンフォースメント=法執行、ポテンシャル=潜在能力、ノーマライゼーション=等生化・等しく生きる社会の実現
 投書(東京36歳・男)「言い換えに違和感。日本語は外来語を取り入れて豊かにした、時間をかければ定着」
 ライブラリー、ミスマッチなどは使うのでは?
 オンライン、データベース、フォーラム、メセナ等置き換え見送り。ユビキタス=時空自在?――見送る
 投書(京都府30代・男性)「日本語の新しい語彙として受け入れればよい」〔既出〕
*参考スレッド「視聴記録(クローズアップ現代)」「納得診療


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 09日 金曜日 23:23:37)

「こだわる」についてスタッフが資料を発掘したりして(自分の部屋の押し入れから?)、興味深い試みも多くなってきました。新しい意味の「こだわる」については、『日本国語大辞典』にも用例がありませんね。

他人の配偶者を敬う言い方として「朝日新聞」1993.3.18〔第2東京〕「いま東京語は」6では「夫さん」を紹介しています。

 もうひとつ困るのが、他人の夫をどう呼ぶか。京都などの生活改善グループが摸索の末に見つけたのが「夫さん」。
「思わずうなりました。おもしろい言葉の発明です。関東にも紹介して回っています」というのは、国語学者の寿岳章子さん。関西方面からじわじわと使われ始めているという。

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2004.01.05 おめでとうございました
 投書(東京都・女)「金メダル受賞で『おめでとうございました』。今はめでたいと思っていないような」
 国井雅比古アナ「昔礼状で『ありがとうございました』と書いて注意された」
 投書(神奈川県・男)「スポーツ競技の優勝者に多い、インタビューで『ありがとうございました』」
 NHKスタジオパーク客50人に調査=「ありがとうございました」おかしい1人・おかしくない49人、「おめでとうございました」おかしい39人・おかしくない11人
 NHK調査(1980)での意見「めでたいのはその瞬間までではない」「『た』は過去形だけではなく強調の『た』もある(困った、困った)」
 「これでよろしかったでしょうか」などの「ていねいの『た』」もあるか
 北海道・東北一部で「おはようございました」=ていねい
 北海道でも「あけましておめでとうございました」は言わない

2004.01.06 短くなります? 北海道
| 投書(東京都45歳・男)「飲食店を営むが、落語で『ありがとうございました』は『縁を切るような言い方』。以来過去形にはしない」
 投書(東京都69歳・男)「『北海道』を『北海』とは言えないのか」
 「北海道」で1つの地名、「北海」の「道」ではない
 明治2年8月「北海道」命名、明治4年廃藩置県、明治15年北海道に3県(函館県・札幌県・根室県)、明治19年北海道庁設置・地名=行政区画名となった
 「北海道県」としなかったのは律令以来「道」の中に「国」があった〔ことに準ずる?〕〔つまり廃藩置県で、県だの府だのと言われるようになる以前から既成事実として「北海道」があったために分解できないということか〕
 県名由来―香川「香りのする川があった」・鳥取「水鳥を取る仕事をする人がいた」・兵庫「(大化改新で)兵器庫を設置せよと命令」・奈良「草木を踏みならす・国をならす・ならの木にちなむ」
 司馬遼太郎『街道をゆく』「愛媛―古事記に愛比売(いい女)」

2004.01.07 「こだわる」にこだわる
 プラスの場合にも使われることについて
 投書(東京・男)「『こだわる』に代わることば:信念を貫く・工夫をこらす・凝る・気に入る・とらわれる・執着・熱中・熱心・気を配る・思い通りに・念入りに・原則〔?〕」
 「コダハル→コ+サハル」〔大言海〕
 拘る 拘泥 拘束 拘留…
 プラスの場合に使われ出したのは1970年代ではないか(番組スタッフ)――『平凡パンチ・Men's Catalog』(1976 WINTER)表紙に「モノにこだわる男ならジッとしていられない本」
 カタログ世代――「学生運動のあとの世代、執着・固執をするというよりも『こだわる』と言ったほうがかっこいい」
 文化庁調査(H14)新しい用法よりも古い用法を使う人がやや多い、「どちらも使う」がより多い、60歳以上は「どちらも」より古い用法を使う人が多い
*参考「山田忠雄『私の語誌』・こだわり」(目についたことば)
*参考「「こだわる」に代わる語」(ことばをめぐるひとりごと)

2004.01.08 私は人ですか? 人間ですか?
 投書(千葉県・女性)「テレビで『私はそそっかしい人なんです』『○○さんは親切な人間です』」
 「人」の用法、〔米川明彦〕『若者ことば辞典』に載る
 「人間」は「やや距離を置いて観察者的な態度で眺めたときの、人。」(『類語大辞典』)
 100人アンケート(2003年末)10〜20代(「ポップジャム」観客)50人・50歳以上(スタジオパーク客)50人「私ってそそっかしい人だから」33:22人、「私ってそそっかしい人間だから」17:28人
 同アンケート(第三者について)「鈴木さんって気難しい人だから」43:44人、「鈴木さんって気難しい人間だから」7:6人
 同アンケート「『人』は親しみやすさ・優しい言い方・人柄や性格、『人間』堅苦しさ・かしこまる・ていねい」「他人には『方』を使う」
 自分にマイナスのことばを使いたくないのでは(梅津アナウンサー)

2004.01.09 「主人」は誰ですか?
 他人に対し配偶者をどう言うか――阿部渉アナ「『うちのムニョムニョが』『うちのが』」、伊東敏恵アナ「友だちには『うちの相方が』」
 投書(東京都30歳・女)「『夫』や『彼』という。友だちの配偶者も。目上には使えない」
 若い人「うちのダーが」(←ダーリン)
 VTR(昭和30年6月ニュース)「第1回日本母親大会」ナレーション「日本のお母さんたちが手をつなぐ初の母親大会が、6月7日から3日間、東京で開かれました」
 大会で丸岡秀子「主人と言わずに夫と言おう」と提案
 人さまの配偶者を何と呼べばいいか?


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 12日 月曜日 14:45:38)

訂正

2003.12.25 気になることばベスト2

× 物理学圏外の物理学的現象
○ 物理学圏外の物理的現象

と思われます。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 28日 水曜日 00:38:53)

上記「北海道」については『週刊朝日』98.08.21-28の綱島理友「なんでかなの研究・略さない北海道」で触れているらしいのでした。(→「なんでかなの研究」タイトル一覧

大相撲・国会中継も終わり、また今週から「気になることば」再開です。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 01月 30日 金曜日 17:59:05)

今週は月金が国会中継で休みでした。
愚案の「ら抜きことばチェック法」を取り上げてもらいました。その放送を見ていたという末田正雄アナウンサーが「目からうろこが落ちた」といたく感激されていたので、満足しています。

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2004.01.27 桜井さん おりますか?
 投書(千葉県60歳・男)「敬語〔尊敬語〕のつもりで謙譲語『何々さんおりますか?』という。『おられますか』だろうか」
 投書(埼玉県)「『桜井さんおられますか』は抵抗感、『いらっしゃいますか』『ご在宅ですか』ならよい」
 梅津アナウンサー「病院受付で『おりますか』と言われるが、違うなと思う」
 いらっしゃいますか>おいでになりますか>おられますか だと思う
 文化庁(H11)「先生は心配しておられたよ」気になる43.1、気にならない51.8。地域別にみると「気にならない」近畿61.7%、関東51.8%(関東・東北低い)

2004.01.28 「ら抜き」に耐えられる?
 宮川アナウンサー「勢い込んで言うときは使ってしまう」
 SMAP「夜空ノムコウ」に「あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ…」
 島田荘司『ら抜き言葉殺人事件』
 NHK調査(H12)「食べれない」おかしい:おかしくない=46%:53%、「来れない」51:48、「数えれない」73:26、「確かめれない」74:25
 「ら抜き」チェック法――「〜よう」(勧誘)が付くなら「られる」も付く(飯間浩明)
*参考「「ら抜き」チェック法」(ことばをめぐるひとりごと)

2004.01.29 レタス 食べれれますか?
 れ足すことば
 投書(東京都・男)「『来れれない』『行けれない』『書けれない』知人の青森県出身59歳男性が連発」
 NHK放送文化研究所(H12)全国「おかしい」82%「おかしくない」17%、東海3県「おかしくない」静岡50%・愛知54%・岐阜68%、年齢別(若者と60代で違和感少なし)「おかしい:おかしくない」20代=43%:57%、30代=58%:42%、40代=55%:45%、50代=52%:48%、60代=30%:71%
 東海だけでなく北海道、四国でも
 「ら抜き」で省略しながら、なぜ同時に「れ」を足すか?――「見れる」の「れる」を可能ととらえ、「飲める」などにも及ぼした


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 06日 金曜日 20:04:04)

3日は国会中継で休止。4日も国会中継だろうとすっかり安心してタイマー録画をなまけたところ、じつは国会が早く終わって、放送された模様。例によってオペレーターの方をわずらわせて概要をうかがいました。6日の放送は「モスクワ地下鉄で爆発 死者20人以上か」のニュースが入ったため休止になりました。

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2004.02.02 ご存知ですか? からいも普通語
 解説・小田川肇アナウンサー(鹿児島放送局)
 CD「かごしま文化の表情 方言編」(鹿児島県制作)からお年寄りの会話――由緒正しい方言『オヤ 上山サン ドケー行ッキャット』『コラー中村ドン ヨカトコエ出ッオイモシタ ジチャー オハンゲー 行ットコジャシタ』〔私の聞き取りによる〕
 NHK鹿児島「さきドリ!情報かごしま」脇元貴子リポーターの「からいも普通語」では――『やー上山さん どこへお出かけですか』『これは中村さん よいところでお会いしました 実はあなたの家へ行くところでした』
 脇元リポーターと友人(VTR)――「さむいねー、桜島に、あれ、きのーも雪、積もってたけー」「積もってたがねー」「あしたも寒いのけー」「なんか寒いとかゆってたよ」「そー、もー、寒いからさー、今日は飲みにいくがー」「だよだよ。行(い)くが行くがー」「どこに行こーかねー」
 特徴(1)語尾が上がる(2)独特の言い回し「けー(疑問)」「がー(勧誘)」
 共通語と融合「寒いのけー?←寒かんそかいな?」「行くがー!←行っもんがー!」
 言語学者・真田信治さん(S62)「ネオ方言」
 戦後の共通語教育=斉藤公子さん(小学校教諭54)証言「黒板に『今週のめあて 方言は使わないこと』」、帰りの会で「きょう○○さんは方言を使いました」、罰掃除、方言札
 方言を見直そうという気運――授業で方言演劇、年寄りに話を聞く

2004.02.04 〔地域限定の外来語〕
 〔鹿児島の外来語について。ラーフル=黒板消し(文房具業界で一般的)、バンコ=縁台、ボブラ=かぼちゃ、ギッタ=ゴムなど。他の地方で、デレッキ=火かき棒、イラチカ=ゴムひも〕〔それぞれ福島、福井などで使われているもののことであろう〕

2004.02.05 尊敬されてください
 窓口敬語――資料を参照されてください・カードを保管されてください・どうぞゆっくりされてください等々
 NHK放送文化研究所(H12)「きいたことがある」24.3%「ない」74.1%、「おかしくない」14.9%「おかしい」83.5%。うち九州では突出して「おかしくない」とする人が多い
 大分大学・日高貢一郎教授――「〔上〕お書き(になって)+ください、〔並〕書いて+ください」の中間に「〔中〕書かれて+ください」ができた
 日高教授――二十数年前に大分県で耳にした。今でもバスで「整理券を取られてください」
 熊本・水俣市役所の文書〔コピー〕「時間に余裕を持って請求されてください。」(熊本県出身の職員が作成、鹿児島出身の職員は違和感)
 国土交通省九州地方整備局港湾空港部〔アナ「航空部」〕HPにも例(末尾参照)
 九州の敬意表現がほかの土地よりも共通語に移行しやすいのか
 京都・大阪・横浜でも見つけた。京都の企業のHPにも例(末尾参照)
 梅津アナ「先に食事されてください」と言われたことがある、ふだん気がつかないだけか
*参考「第2回 福岡空港調査連絡調整会議の議事概要について」(九州地方整備局港湾空港部)「詳細については、添付ファイル(議事概要)を参照されて下さい。」
*参考「PC9801シリーズC-BUS対応拡張基板 98-11 アナログ/デジタル・インターフェース・ボード取扱説明書」(PDF)(株式会社オザック〔京都の企業〕1997年)「その間に回路を接続されて下さい。」「どの程度の影響かは実際にデータを取ってみて判断されて下さい。」


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 13日 金曜日 17:49:22)

今週は2回しか放送されませんでした。「そうじゃん」などという「じゃん」がどこから来たのか、番組で突き止めようとスタッフは真剣になっている模様です。テレビの力でそれに成功すれば学会発表ものでしょう。今までの所は、書物にすでに報告されているようなことにしか触れられていません。

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2004.02.09 配偶者の呼び方 21世紀版
 (投書51通より)夫様・妻様、道連れ、パートナー、お連れ合い(第1位)、配偶者、ご主人・奥様(第3位)、ご夫君・ご妻女、名前〔で呼ぶ〕(第2位)、ご伴侶様、ダーリン、ご良人様・ご令室様
 投書(宮崎県20歳)「『パートナー』をよく使うが、目上または親しくない人に使うと怪訝な顔」
 投書(名古屋市)「親しい会話では『お宅のダーリン』『うちのダーリン』」
 投書(東京都42歳・男)「『主人』もいい。何でもかんでもフラットにするのはことば狩りでは」
 投書(岡山県28歳・男)「『奥さん・奥さま』『ご主人』と呼ぶ。妻を外に出さないと主張するのではなく、現代日本語で最も自然」
 投書「名前を先に伺って、個々の名前で呼ぶ」
 投書「夫を名前で呼んでいると、他人も友人も名前で呼んでくれる」
 投書(東京都22歳・男)「『連れ合い』夫婦の上下関係がまったくない」
 投書(八王子市・女)「98歳の母は少し改まった会話では『連れ合い』」
 これからもしばらくは場面に応じて考えなければならない、放送でも悩ましい。
*参考 「朝日新聞」1988.05.31 p.18「「夫」か、「主人」か(試論私論)」遠藤織枝氏「昭和30年以降のTVドラマに影響されて「主人」が広まった」(要旨)

2004.02.13 じゃんの来た道〜第三弾〜
 投書(長野県・高校生女)「祖父母や母から長野のことばと言われた。祖父母も普段使っている」
 駒ヶ根シルクミュージアムによれば、長野南部で生糸を生産。伊那谷地方から下諏訪まで運ぶ。甲州街道とぶつかる。伊那谷の田中平八は幕末に絹で大儲け、明治元年に横浜へ。
 長野では「じゃんか」「じゃんね」「じゃんけ」
 信州大学名誉教授・馬瀬良雄さん「大正時代にはたしかに『じゃん』は使われたとの証言」(それ以前は不明)
 伊那谷地方と岡崎と塩を通じて結びつきも
 投書(栃木県42歳・男)「浜松の製糸工場の労働力は伊那谷出身」
 手がかりを求む。このコーナーから「じゃん」の生まれが分かる
 伊東アナウンサー「今年中には解決したい」


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ことばを計量する(Yeemar)

このタイトルならば、計量言語学に関することは何でも入ってしまうことになりますが、ちょっと気づいたこと、調べたことをメモするスレッドというつもりです。「ちょっと」というところがみそです。「gooで数調べ」(Googleで数調べ)などとは別立てということにしておきます。


古典作品の分量はそれぞれどれくらいあるか? テキスト化された本文のバイト数で比較する方法もありますが、○○バイトという表現の仕方が、文学作品の分量らしくないというきらいもあります。宮島達夫『古典対照語い表』、とりわけフロッピー版の解説の語彙量の数字を用いる手もあります。現在一般に「源氏物語の総語数は20万語」などといわれるのは、主にこれに拠っているものと思います。(そのほか、網羅的なものとしてどのようなものがあるのか、実はよく存じません。)


活字版の行数を数える手法、これは以前からしばしば行われてきました。今回、斎藤菜穂子氏「蜻蛉日記成立の基底――「書く」という語から――」(『国文学研究』141 早稲田大学国文学会、2003.10)の p.33「注」に、3作品の行数を数えた数字が載っているのを目にしました。

(4) 『新編日本古典文学全集』で比較すると、蜻蛉日記は四〇七一行・源氏物語は三七五五四行となる。枕草子は五六七九行である。巻分け・章段分けによる空頁や空行を除いてある。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 17日 金曜日 19:42:56)

上記論文、さらに宇津保物語は二四四九三行(注5)、和泉式部日記は一〇七〇行(注7)とあります。


posted by 岡島昭浩 at 18:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年10月13日

ハ行音などについて(Yeemar)

「ティ・ディ」などのスレッドはあっても、ハ行音(や「ファ行」音)のことについては適当なスレッドがないようですので、創設しました。「外来音」という括りのほうがいいのかもしれませんが。

リホーム
町で見て、「それも言うならリフォームだろう」と思ってホームページを検索すると(Googleで「"リホーム" -"リフォーム"」として検索)、多く出てきます。私が気づかなかっただけのようです。

「リハウス」(rehouse リハウズ)があるので「リホーム」(reformならぬrehome)があってもいいわけ(トステムでは「ReHome」と表記)。しかし、『小学館ランダムハウス英和大辞典』には「rehome」なし。海外のサイトを検索すると、どうもペットを別の家にやることをrehomeと言っているのではないかと思われます(たとえばPet Orphans Fund)。

「リフォーム」のなまりであれば、「プラットフォーム」を「プラットホーム」というのと同様の例となりそう。「リホーミング」(reforming、石油改質法)というのも『日本国語大辞典』に出ていますが、これは用例がありません。

下記の店(杉並区成田東)で見ました。この店の別の部分では「リフォーム」になっています。2003.10.12

住宅・マンション
店舗・事務所

リホーム
新築工事
設計施工
お気軽に
御相談下さい
〓3220-****
〓は電話マーク。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 13日 月曜日 23:20:16)

別スレッド「ティ・ディ」では、すでにskidさんが「ファンタ」を「ハンタ」「アンタ」、「ファール」を「ハール」という例を紹介していられます。

滝田ゆう氏が、「フワンタ」「コーラー」などの品書きを張ってある田舎の喫茶店を漫画で紹介していたのを読んだことがあります。たしか1981年のことです。

ティ・ディ


UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 15日 水曜日 21:58:08)

拙ページの一つですが、こんな文を書いたことがあります。
「フェ」→「ヘ」の例は、現在も使われている単語を探すのに苦労しました。

ハイト!一発!


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 15日 水曜日 22:47:53)

ありがとうございます。「ウエハース」「プレハブ」「コーヒー」「ヒレ」「ヘット」「イヤホン」「プラットホーム」、そして「ヒューズ」ですね。

「フェ」は、口頭では「ヘ」になる場合も多いかもしれませんが、表記になかなか反映されないのでしょう。

関西で「ヘレカツ」「ヘレ肉」というのは、filetからですからちょっと違いますね(フィレからヒレを経由してヘレ?)。これについては道浦さん「ことばの話857「ヒレカツとヘレカツ」」に論あり、郡史郎編『大阪府のことば』(明治書院)にもあるとのこと。


後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 16日 木曜日 00:06:07)

「トラヒック」(電気通信事業法)、「インホメーション」や

トラヒック site:go.jp


後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 16日 木曜日 00:14:09)

途中で書き込んでしまいました。失礼しました。上記のリンク先は「トラヒック site:go.jp」ではなく、「インホメーション site:go.jp」です。少し前の、特に公的な技術系の分野ではfをハ行で移すことがまれではなく、それが一部で定着して残っているように見えます。
「ホルマント」という用語もそれに近いのでしょうか。

ホルマント site:go.jp


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 16日 木曜日 07:59:44)

NTTの「テレホンカード」も「テレホン」ですね、「テレフォン」ではなく。
テレビ番組でグラフなどを書き込んだ厚手の四角い紙のことを「フリップ」といいますが(「パターン」とも言います)、これをなぜか「フィリップ」という人が、よく、います。


UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 16日 木曜日 23:36:13)

本当はHなのにFになってしまっている表記をたまに見かけます。
例えば「ストックフォルム」はgoogleで約417件引っかかります。
# クロロフォルムの影響か?

笑えるのは「マンホール」を「マンフォール」としているもの。
確かに「人が落ちるところ」には違いないが (^_^;)


後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 18日 土曜日 14:39:23)

>例えば「ストックフォルム」はgoogleで約417件引っかかります。
うち、59件ほどは amazon.co.jp内に偏在しており、これは実際には5件程度と数える方がいいように思いますが、残りの3百数十件は重複はあるもののかなり広く分布しているようです。某地裁の判決文さえ拾われています。

># クロロフォルムの影響か?
「クロロフォルム」では意味が離れすぎでしょう。「フォルム」を考える方がまだよいでしょうが、影響関係を考えるほどの繋がりがみあたりません。
それより、音のレベルで、一般的に f の方が外来語音らしく聞こえるための過剰訂正と考えておいていいのではないでしょうか。参考:「タヴー」「デヴュー」


UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 19日 日曜日 18:45:52)

> ># クロロフォルムの影響か?
> 「クロロフォルム」では意味が離れすぎでしょう。

「クロロフォルムなど」とすべきでした。
クロロフォルムを出してきた理由は、「クロロルム」の表記が一般的になっているからです。
他に「ホルムアルデヒド」「ヨードホルム」などがあります。
これらの例により「ホルム」の綴りは本当は「フォルム」なのだという意識が働き、
「ストックフォルム」の表記に至ったのでは無いだろうかと思った次第です。


posted by 岡島昭浩 at 13:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

車上あらしが・・・(畠中敏彦)


防犯ポスターで「車上あらしが増えています」とあります。なぜ「車内」でなく「車の上」なのでしょうか。



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 13日 月曜日 18:31:40)

 「車上あらし」「車上狙い」などは、見坊豪紀氏の『60年代ことばのくずかご』や『ことばの遊び学』に用例がありますが、なぜそういうだろうかという考察はしていません。

車上ねらい〔63.5〕

乗用車の中の品物を盗むのに「車上ねらい」(「中部日本新聞」3月22日朝6見出し「車上ねらい53件」)とはこれいかに。


(くずかご)


車に乗っている人を「車上の人」と言いますが、車に乗っているものを「車上の物」というような言い方があり、それから出てきたことばが「車上狙い」ではないだろうかと、と思うのですが、これはただの推察に過ぎません。


一方、「車中」というのも古いことばですし、なぜ、「車上」が選ばれたのか、今のところよくわかりません。



畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 13日 月曜日 21:53:52)

岡島さん、ありがとうございます。

「車中」だとバス・電車などの公共の交通機関での犯罪をイメージしますね。これらと区別するためあえて別なことば(車上)を使用した、と考えたくなるのは私だけでしょうか?。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 14日 火曜日 22:53:51)

 私にもよい考えはないのですが、「車上あらし」と、たとえば「車内あらし」と(いう言葉があったとして)比較してみると……

「車上あらし」は、クルマのなかにあるとは限らないものを奪ったりすること、のような気がします。財布・鞄・現金、仕事で使う書類、CDなどなど。運転者の都合でたまたまクルマのなかにあったもの(車上のもの)を対象にするのではないか。

「車内あらし」は、クルマのなかに(必ず)あるものや、取り付けてあって普通なら容易には持ち出せないものが対象になりそう。カーステレオあたりがまず狙われそうですが、さらに豪華なシートや特注ステアリングとか、もっと悪質だと車検証とか。ただ、「車上あらし」の内容を含むことがあってもよい(=上位概念となる)、という感じでしょうか。

無責任なことを書きました。



skid さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 15日 水曜日 02:01:30)

「車上あらし」の「車上」が、本来は「車乗」(=車両)だったなんてことはないかと疑ってみました。



畠中敏彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 15日 水曜日 07:50:19)

佐藤さん、skidさんのご意見を参考にいたしますと、

「車上」は、on the carでなくaround the carとでもいうことになりましょうか。


posted by 岡島昭浩 at 05:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年10月08日

「知らなすぎる」か?「知らなさすぎる」か?(道浦俊彦)


「知らない」の程度がひどすぎる場合には「知らなすぎる」でしょうか?「知らなさすぎる」でしょうか?「さ」は要らないように思うのですが。この手の「〜すぎる」の場合の「〜」に「動詞の否定形」「形容詞の否定形」が入る場合の文法的な解釈はどうなるでしょうか?活用形などにも関係するのでしょうか?また、「〜そうだ」についても「来ないようである」の意味で「来なさそうだ」と「来なそうだ」はどちらが正しいのでしょうか?「来なさそうだ」が正しいと思うのですが、先日「来なそうだ」も耳にしました。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 21:40:23)

まず、文化庁『言葉に関する問答集』の「少なそうだ」と「少なさそうだ」(p.555)が参考になりますね。


まとめると:

--

「よい」「ない」には「よさそうだ」「なさそうだ」のように「さ」が入る。ところが「知らなそうだ」「打てなそうだ」は「さ」を入れないのがふつう。しかし実際は「知らなさそうだ」「打てなさそうだ」も見られる。


国立国語研究所の昭和30年度の調査では「知らなさそう」が多数。


「気持ちよさそうだ」も、「気持ちよそうだ」という言い方が一部で聞かれる。

--


『口語文法講座3 ゆれている文法』(明治書院1964)にも渡辺実氏が「よさそうだ・なさそうだ」を執筆しています。


渡辺氏は「『さ』の正体は、おそらく簡単にはつきとめられないであろう」としたうえで

「良い」「無い」の語幹が一音節であることを考えると、一音節語幹の不安定に対する一種の補強、すなわち挿入音節として「さ」を理解するのが適当のように思われるけれども、他の語幹一音節形容詞には

  濃そうだ 酢そうだ

と「さ」を介さない所を見れば、それも十分に説得力を持った解釈とも言いかねる。要するに「さ」の素性はよくわからないのである。
と述べますが、さらに
「良さそうだ」「無さそうだ」は使用の頻度がきわめて高いのである。法則どおりの「濃そうだ」という形がある、とは前言した所だが、実はそれはあまり言いもせず聞きもせぬ形なのである。
さらに
「良い・無い」の語源意識が弱まれば、つまり長い語幹という意識が強まれば、「さ」の介入を要しなくなる傾向が強まる、と言えそうである。
というふうに、「簡単ではない」といいつつ、結局明快な説明をしています。


「なさすぎる」については触れませんでしたが(触れた文献を今のところ思いつきません)、同様の考え方で行けるのではないでしょうか。


私の語感を申し添えますと、「知らなすぎる」がしっくり来ます。「知らなさすぎる」という文章をみて「あれっ」と思いメモしたことがあるからです(下記)。

字を知らなさすぎるいまの若者が、漢字の持つイメージの豊かさに興味を持つこと自体はいいことだが、〔……〕〔CM天気図・天野祐吉〕(「朝日新聞」1993.02.20)



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 23:52:12)

一体、君の国の人はあまり自分を知らなさ過ぎる。(島崎藤村『海へ』十四)

世の医者は、そういう自分の真の姿を知らなさすぎる」(井上ひさし『吉里吉里人』第十八章)



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 09日 木曜日 07:23:13)

Yeemarさん、すみません、文化庁の「言葉に関する問答集」のP555と言うのは、もともと出ている分冊で言うと、シリーズ何冊目の何ページになるんでしょうか??



skid さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 09日 木曜日 07:54:16)

「言葉に関する問答集3」の56ページですね。

分冊の索引は「…ソウダ(少なさそうだ)」だけになっています。

総集編の索引は「シラナサソウダ・シラナソウダ(知)」と「スクナサソウダ・スクナソウダ(少)」が加わりました。



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 11日 土曜日 17:19:52)

skidさん、ご教示有り難うございます。ふつうの本屋(ジュンク堂と紀伊国屋京橋店)に行って、「もしや」と思いましたが、やはり全部は置いてないですね。天満橋の政府刊行物販売センター(でしたっけ)にまた行ってみます。


posted by 岡島昭浩 at 18:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年10月03日

大学で目についたことば、耳にしたことば


「上回生」。関西の大学で1回生、2回生、ということはよく知られていますが、上級生のことを「上回生」と呼ぶようです。(「上級生」との違いなどがあるのかは未確認)



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 03日 金曜日 14:37:29)

「上回生」!関西在住33年、知りませんでした。

Google検索では1480件も確認!確かに使われているのですねえ!!



後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 03日 金曜日 20:32:28)

>Google検索では1480件も確認!


道浦さんに含むところがあるわけではないのですが、Googleの示す「件数」に

どういう意味があるのか、私にはわからないのです。

例えば、下の参考ページの検索例からすると、Googleは本質的に同じものを何度も

繰り返して数えているように思えます。

www.egroups.co.jp内で dosanko "上回生へ "を検索しました。



後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 03日 金曜日 21:26:52)

否定的なことばかり言うつもりはありませんので、ご容赦ください。「上回生」の

場合には、1000件程度以上の実例がありそうだという見当はつきます。


ところで、東京外国語大学に孤立した例があります(2003年4月10日15時32分

<新入生オリエンテーション・新入生歓迎お食事会のお知らせ>)。

担当の人(教官?)が関西の出身なのでしょうか。

お知らせの掲示



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 04日 土曜日 17:14:08)

確かに後藤さんがおっしゃるように、Googleの数は、昔テレビでやっていた「テレゴング」が「同じ人が何度も電話をしたらそれが票数になる」という意味で、似ていますし「厳密なアンケート調査」ではありません。それは分った上で、私個人としては「使用例1000件」というのをひとつの目安にしています。(ごく一部での使用ではない、という目安。)そういう意味で1480件は(上回生という言葉をまったく知らなかった私にとっては)予想以上に多かった、ということです。でもついつい、Googleの数を「信じて」しまいがちですが。


大阪外国語大学の小矢野先生にうかがったところ、「ずいぶん前から使っている」とのこと。滋賀医大の友人(同い年、学生ではない)に聞いたところ「聞いたことがない」とのことでした。医大の場合、もし使うとすれば、「4,5,6回生」をさして「上回生」というのですかね?と聞かれたのですが、どうなのでしょうかね。



後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 05日 日曜日 22:36:02)

Googleの検索結果の「件数」は全例を目視確認できる数百例までの場合は、

それなりに信じてよいのだろうと思います。

ただ、検索結果数が多い場合は、そのままでは全例を確認することはできません。

上位の方の検索結果をみてそれでみえないところを類推してしまいがちなのですが、

上位に挙げられるものはいい一致を示しているもので、下位の方は必ずしも

そうでない可能性があります。それは私たちが意図している検索結果では

ないかもしれないのです。

「件数」の数字そのものは大雑把な目安としては確かに役に立たない訳では

ありませんが、その数字に立脚してなにか言うことは非常に危険だと思い

ます。たとえば、下のリンクの検索結果は、現在、396件となっていますが、

これは現在のGoogleのくせといくつかの偶然が複合した結果であり、ちょっと

事情が変われば、一桁になったり、ゼロになったりするかもしれません。

Googleの「件数」はその程度(あるいはその数倍の)変動は見越しておく

必要のある数字なのです。


私としては、Googleは件数にこだわる使い方より、検索条件を工夫して

さまざまな実例を確認するための使い方の方が適していると思います。

滋賀医大での使用例は「site:shiga-med.ac.jp "上回生"」を検索すると

一例得られます。当該のページは削除されていますが、今ならキャッシュで

本文を確認することができます。文脈からは1回生と対比させているように

読めるのですが。


全言語のページから"上回生" dosankoを検索しました。  



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 11日 土曜日 19:23:08)

同志社大学の先生に聞いたところ、「学生たちは使っている、自分より上の学年の先輩を指して『上回生』と呼んでいるようだ。『上級生』という言葉は使っていないと言う。私はてっきり彼らは『上級生』という言葉を使っていると思った。『上回生』という言葉を私は知らなかった。」とのことでした。関西では、やはり広がっているようです。



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 11日 土曜日 22:45:59)

1959年生まれで、京都大学出身の人に伺ったところ、使っていたということでした。


なお、googleなどでヒットする「下回生」については、若い人も含めて「使わない」ということでした。「同回生」も使わないということでした。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 25日 土曜日 19:20:14)

大学院の学生(早稲田大学に限るか?)が、学会での研究発表の順番を指して「1発目の発表はだれだれで、2発目のの発表はだれだれで……」という言い方をします。私が「おやおや」と思ったのは2001年ぐらいだったでしょうか。どうも放屁でもするようでいただけません。とりわけことばの研究発表会では繊細な注意を払ってほしいという感想ももちます。発表だから1発目、2発目。たしかに首尾一貫してはいますが、いただけないのです。新しい言い方ではないでしょうか。


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2003年09月28日

ハヤシライス(Yeemar)

「ハヤシライス」はなぜ「ハヤシライス」と言うの? という(よくありそうな)話題についての記録を集めたいと思います。

・『日本国語大辞典』では「(洋語 ハヤシは、考案者である丸善の創業者、「早矢仕(はやし)有的」の名から、ライスは、英 riceという。また一説に、洋語 hashed rice からとも)《ハイシライス》」とあり、用例は「*放浪時代(1928)〈龍胆寺雄〉」「*古川ロッパ日記-昭和九年(1934)三月一日」。

・丸善ホームページの「丸善の歩み」では、1869年に「創業者 早矢仕有的は師事する福澤諭吉のすすめにより丸屋商社を横浜に創業、書籍・文具・洋品雑貨を販売」。ハヤシライスについては、「丸善特選グッズ」に

明治の初期、丸善(株)創業者・早矢仕有的(はやし・ゆうてき)が考案したとされる「ハヤシライス」。本格デミグラスソースと柔らかビーフの贅沢な味わい。ハヤシビーフ1缶とカレービーフ1缶のセットです。
とあります。

・『日本国語大辞典』のいわゆる「一説」の出所は? 楳垣実『日本外来語の研究』(1943) p.161に以下のように。ただし楳垣説は「林」(早矢仕に非ず)説を「作り話に違ひない」としりぞける。

 最後に通俗語原が伝説の形にまで発展した念の入つた例を二つあげておかう。その一つは「ハヤシ・ライス」に関するもので、このハヤシは英語のhashed(こまかく刻んだ)であるが、それにライス(米)が続いたのでは意味をなさない。おそらくカレー・ライス(curry and rice 又は curried rice)やハム・エッグス(ham and eggs)などから想像してみて、hashed beef and rice とでも呼んだものが省略されて、ハッシ・ライスとかハイシ・ライスとなり、一方で、国語にも「こまかく刻む」意の「はやす」といふ動詞があるところから、「はやし肉」といつた語が生れて、「ハヤシ・ライス」が生じたのであらう。このやうな語原が判らなくなつてしまつたために、つぎの伝説が生れた。
明治初年に林某といふ男が横浜に住んでゐた。この男が或る洋食屋へ来て、いつもカレー粉の入らないカレー・ライスを註文した。店員が一々「カレー粉の入らないカレー・ライス」と板場へ註文するのが面倒なので、いつしか「林さんのカレー・ライス」といふことに決めてゐたが、忙しい時にはそれでも困るので、さらに「林・ライス」と省略した。それがお客の耳に入り、「俺も一度その「ハヤシ・ライス」とかいふのを食つてみよう」といつた訳で段々と拡まり、遂に今日のやうにハヤシ・ライスといふ名と共に全国的になつた。
この「ハヤシ・ライス」は、関西では「ハイシ・ライス」と呼んでゐるから、おそらく関東方面の用語であらう。作り話に違ひないが、割合にうまく出来てゐて、チキン・ライスを「チ・ラ一丁」などと呼んでゐる店が大阪にあることを考へ合せると、仲々面白い。
・「早矢仕」説に沿った文章。「朝日新聞」夕刊 2003.09.24 p.7 マリオン3「TOKYO老舗・古町・散歩」日本橋:1 丸善周辺〔坂崎重盛〕
 ところで丸善の、ひっそりとした屋上が、ちょっとした穴場だ。ハヤシライス発祥の地のハヤシライスが食べられるのだ。
〔丸善の創業者早矢仕さんが命名したハヤシライス。隠し味のスパイスが常連を引きつける 写真・横田正大〕
・小菅桂子『にっぽん洋食物語大全』(講談社+α文庫) p.456にはだいぶ詳しく出ています。
 ハヤシライスの誕生についてはいろいろエピソードが伝えられている。
「大河内 (笑)私はハヤシライスは林という人が作ったからだと思っていました。
 金田一 そういう説もあるんですね。それから林さんという人が毎日のようにやってきて注文する。だから林さんのライスだよということで」
 これは『食食食』の「日本の洋食」についての金田一春彦さんと武蔵野女子大学学長の大河内昭爾{しょうじ}さんの対談の一節である。
 私も以前資生堂パーラーの顧問だった高石〓[金英]鍈之助さんから「ハヤシライスは横浜のハヤシさんという人が考えたという話を読んだことがあるよ」と聞いていた。
 私自身は「丸善の社員食堂で出したのが最初」という一文を読んだ記憶もあった。
 たまたま「カツ丼」の話で早稲田の中西敬二郎さんのところへうかがった折り〔ママ〕、話題が偶然ハヤシライスに及び、それも横浜のハヤシさんのことになった。すると中西さんの表情と声がにわかに熱を帯びて来た。私はびっくりして身を乗りだした。すると中西さんは、
「その話は本当ですよ。丸善の創業者は早矢仕有的{はやしゆうてき}といいましてね。日本橋の丸善は、それ以前は横浜にありまして、西洋薬や西洋雑貨を輸入してたんですよ。そのうち頼まれて洋書も輸入するようになったんですが、早矢仕さんはその頃横浜の店で小僧さんたち、つまり使用人の昼ご飯に、ご飯とおかずが一皿ですむハヤシライスを考えだした。それが今日のハヤシライスとして伝わったんです。ぼくはそう聞いていますよ」
 こう力説するのである。
 「横浜」「早矢仕さん」「丸善」三題噺{ばなし}ではないが、なるほど!
 ハヤシとはハッシュ、つまり肉を細かく刻んだ料理のハッシュがなまったもので、正式にはハッシュ・ライスあるいはハッシュド・ビーフ・ライスということになるのだが、とりあえず『丸善百年史』を見た。するとありました。あったのです。
以下長いため多少要約しますが、社史では、有的は友人が訪問すると野菜のごった煮に飯を添えて饗応したものを人がハヤシライスといい、レストランのメニューにもなった由が書かれ、さらに
 しかしこの話はあまり面白すぎる。英語でコマギレのことをハッシュといい、転じて肉と馬鈴薯や人参などの野菜との煮込みもハッシュという。神田佐久間町の三河屋は、明治初年以来の洋食屋であるが、そこではハッシュ・ビーフがよく流行{はや}った。これとライスと合せて称したものが、ハヤシライスの語源に違いない。しかし三河屋も有的が贔屓{ひいき}にした料理屋であるから、間接に関係があるといえば、いえないこともあるまい
と記録されているとのこと。丸善は自社の宣伝になるかもしれないエピソードにも客観的な姿勢です(ホームページの通信販売ページの姿勢と微妙に異なる)。

『にっぽん洋食物語大全』ではさらに、

 といっていたら、皇太子殿下のハウスコックである宮内庁大膳課の渡辺誠さんから異論が出た。ハヤシライスのルーツは、東欧料理のグラッシュ(goulash)だというのである。
とあり、以下、グラッシュの料理の説明、宮内庁ふうのハヤシライスは「元宮内庁の主厨長であった秋山徳蔵さんによって「上野精養軒」に、さらに神田の「松栄亭」に受け継がれている」ことが記されています。

・結論として、「林某」説、「早矢仕有的」説(この2つは同じか)、「hashed」説が拮抗していて、どちらとも断じがたい。関西で「ハイシライス」等となるらしい理由も考える必要があります。ただし、私の興味は、今民間で一般的に最も受け入れられているのはどのような説であろうかということです。

なぜこのようなことを書いたかと申しますと、日本橋丸善の屋上にハヤシライスを食べに行ったところ、まだ夕方なのに売り切れだったからです。いつも午後5時ぐらいにはなくなるとのことです。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 09:49:43)

と書いてから、あらためてホームページを検索すると、おやおや、この話題については山ほどのページが出てきます。これらを整理分類するのも骨ですね。


skid さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 14:12:48)

柳瀬尚紀『広辞苑を読む』(文春新書、1999年)に「ハヤシライスができるまで」という項目があって、「生やし」ライス説を紹介しています(「生やす」=「切る」の忌詞)。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 21:27:56)

ありがとうございます。『広辞苑を読む』は読んだのですが、ハヤシライスのことは忘れていました。

『広辞苑』初版で「(hashed-rice)」という洋語を当てていたのが、なぜか後の版で「(hashed meat and rice)」に「正しく」直されてしまったが、信用できない、他の辞典でも洋語はばらばらであるということが書いてありました。

今、気づいて『日本国語大辞典』初版を見てみると、「ハヤシライス」の項目には語源を書いていません。「早矢仕」説は第2版からです。また、初版では柳瀬氏のいうように「ハヤシ」の項には「(英 hash から)……Hashed beef から出た語ハイシの訛りに、物を切り刻む意の国語ハヤシが結びついたもの〔猫も杓子も=楳垣実〕。」とあって、ここでまた楳垣実の名が出てきます。この「ハヤシ」の項目は第2版にも引き継がれ、ただし「(英 hash から)」が削除されています。

『猫も杓子も』(創拓社)の「ハヤシライス」を見ると、上掲の林さんの挿話も、ほとんどそのまま繰り返されています。論旨は『日本国語大辞典』にまとめられている通りです。


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2003年09月22日

こんな会社名


 佐藤さんのページを見て、思い出しました。こんな会社名があったなんて、又あったら面白い、というのを書きたいものだと。


 福井に「うらやま歯科」があった。


 「板垣システム」という社名は存在するだろうか。あれば「自由は死せず」を社是にしてほしい。

充電日記2003/9/20



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 22日 月曜日 07:37:41)

おそれいります。


吉村昭『私の流儀』(新潮文庫)を読んでいたら、「野呂タクシー、野呂運送店、板井歯科」などが出てきました。「藪医院」というのも想定されてました。WWW上を検索すれば…… と思ったまましてません。

岐阜市の隣にできた瑞穂市を走っていたら「からくり歯科」だったか「からくり医院」だったかの看板に出くわしました。小児専門で、動くおもちゃをたくさん置いてあるのかなと思ったら、地名が「唐栗」だったのでした。

おもしろ名前の店 その1



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 22日 月曜日 09:26:12)

 「からくり」のような、巧まざる(あるいは巧んだとしても正当な理由のある)ものがいいですね。


 「おもしろ名前」には、わらかしてやろう、というものが多そうですね。


 「板垣システム自由は死せず」は、既に〈駄洒落の多元的発生〉をしているようです。



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 01:33:37)

「歯科」シリーズ。「田野歯科」「岡歯科」。熊本あたりでは「伊庭歯科」(いばしか)などは敬遠されそう。「いばしか」は「いましい(いまわしい)」です。

「スズ歯科」はあるかもしれないが、「うれ歯科」「むな歯科」「かな歯科」「くる歯科」はあるかな。


九州方言からは離れますが、「伊野歯科」「辰巳歯科」なんてのはどうでしょう。


実際、歯科は、小児科以上に凝った命名をする場合が多そうです。「人名(地名)+歯科」という単純なものでない確率が比較的高そうな気がします。ですから、「人名+歯科」をみても、人名・地名を仮名書きしてあれば、凝った命名かと思ってしまいやすいように思います。また仮名書きの確率も、内科や外科に比べると高い気がします。


「与謝内科」などは、仮名書きしてくれそうにないですね。なお、「よさないかいいんです」は、会話のようです。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 02:06:31)

下記のようなホームページがあります。

「渾身のレポート「ア歯科の謎」」(1997-1999)。

小学校の先生(愛知県の方とおぼしい)が遠足のときに見かけた「ア歯科」という看板のなぞをレポートするというものです。

「ア歯科」はグループだとのことですが、香川県高松市にも「ア歯科診療所」という医院があり、わりあい有名です(このことは上記ページでも触れられています)。高松市で生まれ育った私などはすでに違和感を感じません。「VOW」などという雑誌に載っているのを目にしたような記憶もあります。

渾身のレポート「ア歯科の謎」



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 08:25:16)

「あ歯科」「ア歯科」、Yahoo!電話帳で見たらそこそこあるんで、二度びっくり。

「せから歯科」はないものか、と検索したら下記URLに。もちろん、想像上のもの。実例に「今奈良医院」「鈴鹿内科」(「すずしか〜」と読みなし)が挙げられてました。

雑記〜看板



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 18:00:39)

「ア歯科」はすごいですね。命名者の勇気に感動します。「加茂歯科」というのを思いついて、加茂さんが歯医者になるときに、素直に「加茂歯科」と名づけるのに躊躇するのではないかと思ったのですが、「あしか」とは。


「は歯科」。歯の治療は若いうちに済ませましょう。ハシカのようなもんです。


それから、福岡県に多い名字で「藤(とう)」で、「藤歯科」。「大口投資家」ということで、大きな口を開けているのがシンボルマーク。


「不動産」と「不動さん」「不動尊」の関係もありそうです。

「水掛不動産」とか、「お不動産」とか。


地図で、「○○不動尊」が「○○不動産」と誤植されているのを見たことはあります。


また、福井には「地蔵屋不動産」というのが実在します。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 20:44:48)

「辰巳歯科」…… あ、引歌(?)ですね。


東京の人なら、目黒など、目の色名の不動尊はお馴染みかも。「目黒不動産」なんていう社名もありそうですが、検索すると、とりあえず宮城県のが複数ヒットします。


でも、不動だけに、こんがら(金伽羅/矜羯羅)がりそうですね。誰のせいだか(制た迦)知りませんが、下記リンク、下から四つめの画像のように。


ディアナコート碑文谷



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 06日 月曜日 16:29:53)

中国料理「山楼蘭」


やっぱり、サンローランと読むんでしょうねぇ。

ビーシーフレンズショップ



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 06日 月曜日 21:57:42)

中野区の大久保通りに、「華厨舎」という中華料理店があります。ひびきはロシア料理のようですが、字の意味は中華料理ふうです。


今のところ「Hello JAPAN」しか関連ホームページが見つかりません。



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 12:20:59)

学生時代、友人の下宿に泊まった翌朝、「ロシヤ料理食べにいこか」といわれてつ付いていくと、「ヤシロ」という看板のある定食屋でした。そんなことを思い出しました。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 14:14:02)

ひょっとして、下記URLの一番下から二番目でしょうか?


レストランDB



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 16:11:41)

なにせ、20年も前のことで記憶も曖昧ですが・・・荻窪ではなかったような。中野あたりだったような・・・。申し訳ありません。でも看板は「右から左に読んでも不思議はないような」、そのようなたたずまいの店でした。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 16:25:12)

新宿区細工町には「牙買華」(じゃまいか)という喫茶店。「牙」が「じゃ」とはちょっと無理な読みではないかと思い、写真を撮りましたが、調べてみると中国語では「牙買加」だからこれで前半は問題ないわけ。後半は、huaと発音する「華」とjiaと発音する「加」は入れ替えできないと思われるので、日本語音の「か」を当てたのでしょうか。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 16:32:27)

新宿区岩戸町には「甦歩伊亜」というおそらく喫茶店あり。これだけですと、「アホイヤー」とか「たほいや」とかさまざまに読まれそうですが、正解は「ソフイア」と読む。「フィ」を「歩伊」に分けている。中国語では「索非亜」とあてる。「Yahoo!電話帳」でも出てこないようですが、あるのは本当です。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 08日 水曜日 16:36:24)

ソフイアは居酒屋ですね。「Yahoo!電話帳」で、Sophiaで検索されました。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 15日 水曜日 11:56:18)

杉並区高円寺北三丁目(JR中野駅の次、高円寺駅北口)に「定食のヤシロ」の看板・「定食ヤシロ」ののれんを出している店を、2003.10.11に見つけまして、もしやと思い道浦さんに伺ったところ、「たぶん、そこです」とのお答え。なるほど、のれんの横書きの文字が、えんじ色に白の変形太ゴシック体ふうで、右から「ロシヤ食定」と読みたくなるような雰囲気でした。ウェブでも検索されました。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 20日 月曜日 19:23:43)

昔の話である。

ちょっとお洒落な「ホテル330グランデ岐阜」に友人を送っていく。ついでに晩飯でも、となって、隣の「926パーキング」にクルマをあずける。そばの電柱を見上げると「国六駐車場」云々の文字が。「926」=「国六」か…… やれやれ。

 待てよ? ひょっとして、まさかそんなことはないと思うが、お洒落な「ホテル330」も語呂合せか? 隣同士でそんなことないよなぁ。と思いつつ、渋谷の「109」の例もあることだし。

ミサワリゾート りそなび



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 20日 月曜日 19:28:02)

CMで見たミサワホームはHPのアドレス(URL)にも「330」を使っていたように思います。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 18日 火曜日 16:56:55)

「清酒岩波」「岩波酒造合資会社」


松本市内を歩いていて「清酒岩波」の看板を発見。酔ったら議論でもふっかけられそうな名前だなと思ったり。そういえば、岩波書店の創業者は長野県出身だったはず。さすがゆかりの地、などと独り合点しておりました。が、これは偶然の一致のよう。↓

岩波酒造合資会社



NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 19日 水曜日 03:02:01)

うちの近所に「ナウ歯科」というのがあります。看板には「鹿」のイラスト。その数百m先には「三須歯科」もあります。


小樽市内に「Le TAO」という洋菓子店があるそうです。サッカーチームの「コンサドーレ」といい、北海道は逆読みが好きなのでしょうか。


小樽洋菓子舗「Le TAO」


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2003年09月21日

「さいたま地裁」では、裁判の権威が落ちるのでは・・・?(チェック百合絵)


「さいたま地裁」では、裁判の権威が落ちるのでは・・・と以前心配されていたようですが、 あそこの場合文字道理 名が体を表すです <全国の地方裁判所の中で さいてい の裁判所ということです、 なにせ他では書類を入念にチェックするのに、 チェックと言うことばの意味さえ知らない様なところですので>・・・


posted by 岡島昭浩 at 09:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年09月19日

正しいけど違和感(佐藤)

「味わわない」
「タイイク(体育)」
ちゃんとした表現・語形・文字なのに、妙に座りが悪い…… そういうのってありますよね。ひょっとしたら、次代には新たな形式にバトンタッチしているかもしれない。そういうの、教えてください。

*タイトルに「正しい」が含まれますが、とりあえず分かりやすいので。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 19日 金曜日 23:22:59)

 実は(というほどでもないのですが)、私は「タイイク」にはさほど違和感を感じません。「タイーク」と把握しているのだと思うのですが、アクセントのことを考えると、やはり「タ’イーク」は変かな、とも思います。しかし「タ’イク」は外来語のように感じてしまい、「タ’イーク」の方に親近感を感じます。綴り字発音ではないと思うのです。
(ご趣旨からははずれますが)


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 19日 金曜日 23:52:30)

>(ご趣旨からははずれますが)

いえいえ、ありがとうございます。
私は、教科名としてはタイクとしか言わない(言えない)のですが、知育・徳育と並べられるとタイイクが出てきます。
岡島さんは、教科名としてもタイイクないしタイークですか? とすると、ひょっとしたら、エイ(例:映画)の発音が[ei]である地域(岡島さんの出身地も?)と[e:]となる地域(私の出身地)があるわけですが、そういうことと対応しないかなと思ったりもします。ちょっと飛躍というか、二つの現象を結びつけるにはちょっと説明が必要ですが。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 20日 土曜日 00:24:31)

正しいのに違和感をもつ場合は、すでに一方で誤りの形が生まれている場合が多いと思います。たとえば、私は「のたまった」ということばに違和感をもち、「のたまわった」と言いたくなりますが、これはすでによく見られますね。(Googleで「のたまった:のたまわった」=53,000:2,810)週刊誌の例を添えますと

「オウムの信者がかぶるヘッドギアのことだっけ?」と、のたまわった本誌某デスクよりは、はるかにマシな答えであるが。(「週刊朝日」1995.06.16 p.143)
「子、のたまわく」というような言い方が影響しているのでしょうか。

とくに誤り形が想定されないのに、正しい形に違和感をもつ例となると、むずかしそうですね。

「あまやか」ということばは、毎日新聞で使われ、「Uアナウンサー」が「『甘やか』なんて言葉、ありませんよね!!」と指摘したそうです(平成ことば事情1196「甘やか」)。道浦さんは「『日本国語大辞典』を引いてみると、なんと!「甘やか」、載っているではありませんか!!」と驚かれています。私は、小説で目にして、やはり「甘やか」なんてあるのかなと思いました。

健吾の体を抱きかかえ、一方ではつきあげる甘やかな感傷に胸を熱くしながら。(江国香織『落下する夕方』〔1996.11発表〕角川文庫 1999.06.25 p.128)
これは、「やか」がク活用形容詞の語幹につく例が現代では少ないせいかとも思います(「細(ほそ)やか・若やか」などは古語的、「ほそやか」はワープロでも出ない)。仲間が少ないための違和感でしょうか。

「うれしみ」「さびしみ」ということばは、あるのかと思いますが、辞書にはあります。書物では、

人との出会いやつながりが、うれしみや楽しみ、面白さを生み出します。(キモトアユミ『自分からこころをひらく練習』リヨン社 1998.12 あとがき)〔これは学生から教わった例〕

夏子が生きていたらということがはっきり感じられてきた。死ぬということは実によくない。自分はこんな取りかえしのつかないことがあるかと思い、さびしみが骨の髄{ずい}まで徹{てっ}した。(武者小路実篤「愛と死」〔1939.07発表〕 新潮文庫 p.101)

「うれしさ」「さびしさ」なら言うけれど、というところです。

「うんざりと(○○する)」という言い方、これは誤用すれすれなのかもしれないと思いましたが、珍しくないのでしょうか。

 私は窓ガラスに映った自分の顔を見て、うんざりと首を振った。今更とうの昔に過ぎてしまったことを考えて何になる。《稀少》(山本文緒『ブルーもしくはブルー』〔1992.09発表〕角川文庫1996.05.25初版 p.26)

「さて、どうなさいますか。昭光道成居士さん」/ 教壇の上で資料を整理しながら教官が言った。/「再審査をお願いします」/ 教官はうんざりと椿山を見上げた。再審査は死者の権利なのだが、なるべく希望者の出ぬように説諭することが教官の使命なのだろう。〔浅田次郎・椿山課長の七日間33〕(「朝日新聞」夕刊 2001.08.09 p.3)

私ならば「うんざり(と)する」という使い方しかせず、こういう場合には「ものうげに」「力なく」「面倒くさそうに」と言います。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 20日 土曜日 17:34:20)

>岡島さんは、教科名としてもタイイクないしタイークですか?
そのつもりです。「タイク」だと、「サンス」「ズコ」ほどまではありませんが、どことなく物足りない気がします。
ただ、綴り字発音ではない、と今は感じるものの、幼い頃に(言語獲得期に)身につけた、綴り字発音であるのかもしれません。

さて、私が違和感を感じる言い方を一つ思い出しました。「(……と)おなじため」です。「おなじ」は、連体詞であったり、形容動詞語幹であったりしますが、「おなじなため」でも今ひとつしっくり来ない。「おなじであるため」なら違和感はないもののちょっと長い、という感覚です。「おなじために」なら少しましかな? でも「おなじなために」は、これまた落ち着かない。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 20日 土曜日 18:54:36)

香川県高松市出身の私も「体育」は「たいいく」と発音して疑いません。「たいく」はどうしても「体躯」という感じがします。「日本体育大学」「体育の授業」「体育館」いずれも「たいいく」。主観的には4拍で、聞き手もそのように聞くと思います。

「容易じゃない」を埼玉県出身の母は「よいじゃない」と申しました。私も小さいころ真似していましたが、これは意味からして方言的で、「わずらわしい」「思うにまかせない」という意味だろうと思います(方言辞典に載っているのを見た記憶があります。『埼玉県方言辞典』?)。山田太一脚本のドラマ「冬構え」(NHK 1985)のラストシーンで、笠智衆と藤原釜足が「(人生は)よういじゃないねえ」「よういじゃない」と語り合うところがありますが、これは母のいわゆる「よいじゃない」であろうと思っております。

「おなじため」「おなじなため」で思い出しましたが、私は、以下に挙げる例を始めとして、「名詞」+「な〔断定助動詞連体形〕」+「形式名詞」のたぐいに一様に「正しいけど(?)違和感」ないし「ちょっと立ち止まるけれども許せる」という複雑な感じをもちます。『集英社国語辞典』の「だ」の説明(川端善明)によれば「連体形「な」は準体助詞「の」へのみ続く」とありますから、「誤り」としてしまうこともできるのでしょうが、多数にのぼる例なため違和感が薄れてきた現状なわけでしょうか。

・寺の墓地へ墓を立てさせて金にしようといふ魂胆なものと見えて(夏目鏡子述・松岡譲筆録『漱石の思ひ出』改造社 1928.11.23発行 p.350-351)
・「しかしどうして?」/とまた訊ね、女中の目つきでようやく雨傘が原因なことを知ったのである。(丸谷才一『たった一人の反乱』〔1972.04発表〕講談社文芸文庫 p.85)
・何しろ時代はのんびりしてゐたし、所は温暖の地な上に遍路にゆかりがあるから(丸谷才一「横しぐれ」〔1974.07発表〕『横しぐれ』講談社文芸文庫 1990.01第一刷 p.122)
・「商品の主力は生活必需品なためでしょう」という。(「朝日新聞」1995.01.26 p.11)
・「寅さんは旅に出かけて留守なだけ」。こう思いたいのはファンだけではないらしい。(「朝日新聞」夕刊 1997.08.09 p.9)
・〔REINA(「MAX」のメンバー)〕〈紅白〉って、一年の中で最大のお祭りな感じがします。(NHKウイークリーステラ臨時増刊『紅白50回』2000.01.16 p.27)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 20日 土曜日 19:08:27)

「ようい」は、NHK教育「ふるさと日本のことば」でも聞きました。番組では偶然なのかどうか埼玉、福島の回でしたから、北関東のことばでしょうか?(私の索引)。

よーい(容易;簡単)「年とったちゅーだかなんだか、まー――ではねぐなったない」〈三春町〉【福島】
よーい(容易;簡単)「――じゃなかったいな、峠いくつも越えてさ」〈秩父市〉【埼玉】
と記しておきましたが、これは硬い漢語としての「容易」ではないと思います。ちょっと話がそれましたか。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 20日 土曜日 21:30:00)

「熟字」
「熟語」の上っ面、文字だけをとりだして言いたいときに使うのですが、ちょっと後ろめたいというか、落ちつかい。「熟語形」では余計変だし、誤解されそうだし。

西日本出身のお二人が「タイイク・タイーク」とは認識を改めました。ありがとうございました。「甘やか」は、私、使いそうです。実際、使ったら気恥ずかしいでしょうけれど。
 

熟字 「熟語(じゆくご)(2)」に同じ。」→「熟語」 


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 21日 日曜日 23:39:19)

「金+矢」(「鉄」ではなく)
ここからリンクしてよいものかどうか。でも、JR西日本は「正式には」と言っているので。

JR西日本:なるほど


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 22日 月曜日 00:53:18)

浅田次郎『鉄道員』で、「JR北海道では」と書かれていました。そこでも、JR各社であるとは書かれていなかったのですが、全部纏めてそうだったと思います。証拠写真などのあるところはないものでしょうか。
ホームページのロゴでもよいのですが、JR北海道のページにはないようです。四国のは突き抜けているように見えます。

それから、先例は「名鉄」であると読んだように思うのですが、ホームページ上では確認出来ません。


skid さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 22日 月曜日 16:20:26)

JRが「鉄」の字を「金+矢」にするのは、ロゴのデザインや社内文書に限られているはずです。
一般に使うのであれば「鉄」でかまわないことになります。
そもそも、会社の登記書類は「鉄」ではないでしょうか。
これについては「読売新聞」の1987年2月17日と21日に大きく出ていました。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 23日 火曜日 17:37:24)

「世界文化村ぎふ」
下記リンク先の左上のロゴの読みなんですが、どんなものでしょうか。デザイン優先は分かるのですが。

岐阜県図書館


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 23日 火曜日 23:29:47)

 skidさんの書き込みの趣旨が分かりませんでしたが、やっと飲み込めました。リンク先であるJR西日本のQ&Aにも「JRが発足時に正式社名ロゴを決定する際」とあるように、あくまでロゴとして「正式には」〈金+矢〉を用いるということです。他の、文書上などでの用字(用字形?)については触れるつもりはありません。
「世界文化村ぎふ」の書き込みに比べて簡潔すぎたかな。「ロゴ」の一語を入れておけば丁寧でしたね。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 18:02:14)

「世界文化村」なのか「世界文化材」なのか、と思いますよね。
「世界文化ざい」なんて、まるで世界文化遺産みたいだな、と。

で、考えたら「文化ざい」は「文化財」だから、これは「文化村」なのか、と。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 24日 水曜日 22:38:33)

「不動産屋さん」というのは、「さん」が繰り返され、なんだか二重敬語(?)のような感じがして落ち着かないのですが、こちらの書き込みを拝見して、不動尊を「お不動さん」というせいもあるかもしれない、と思いました。

昔々、おそらくもう20年ぐらい前でしょうが、NHKラジオか何かで、「今朝の朝日新聞」というのがダブっているようで気になる、と言っていた人がいました。


skid さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 25日 木曜日 02:26:01)

早合点でした。
正式ロゴだが違和感ありということですね。

私の違和感は「考」の字形。
老かんむりの下の部分は「巧」の右側と同じ形のはずだったのに、左から右に「一」ではなく右から左に「ノ」と書くデザインが多くなってしまったのは何故なのでしょう。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 25日 木曜日 08:06:45)

明朝体で、カタカナの「ヒ」の1画目を「ノ」(左へはらう)にしてあるものが多いのではないかと思います。うちのパソコンのフォントでは、「MS 明朝」「FA 明朝」「TT-S明朝体ソフトMedium」などは明白に「ノ」です。「JS明朝」「DHP平成明朝体W3」などでは「ー」(横棒)のようにも見えます。

私が習い覚えたのは「ー」です。江守賢治『楷行草 筆順・字体字典』(三省堂)の「カタカナの筆順」の手書き文字でも「ー」です。

光村図書『こくご一下 ともだち』(2001.06)に出ている手書きのカタカナ五十音図では「ー」で、ご丁寧に「→」と矢印が付してあります。光村図書・学校図書の小学校国語の教科書体活字は、「ノ」とも「ー」とも見えますが、「メ」の1画目のような起筆がないので「ー」であろうと思います。

うちのパソコンに入っている「HGP教科書体」では、「ヒ」の1画目は左ほど細くなっているので、これは「ノ」を表現しているのであろうと思います。「FA 教科書M」では「ー」のようです。

歴史的には? 手近なところで『日本国語大辞典』の「ひ」の「かたかな」を見ると、即断しがたいものの、いずれも「ー」ではないかと思います。

「ヒ」は「比」の一部を取ったものですが、「比」は明朝体では左は「ー」、右は「ノ」です。しかし、上掲字典では、「ー・ー」とするもの、および、「ー・ノ」とするものの2種類の「比」を上下に並べて示したうえで、「下が小学校教科書の活字の形。一般では上の形に書くのが普通。」と注記してあります。つまり明朝体の「比」は手書きと異なっているわけです。

『五体字類』を見ると、なるほど「比」は「ー・ー」と書いてあります。

結論を言うと、「ヒ」を「ノ」にしてある明朝体活字は、私には違和感があり、正しいかどうかも疑問ということになります。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 25日 木曜日 12:36:13)

「清朝(体)」
 書体で思い出しました。私はシンチョウと読みがちで、その読みも許容されているかと思いますが、どこかで誰かが「正しくない読み方だ」と書いていたような。

 書体つながりで、またロゴですが、「ラジオ技術」。ヤフオクだとより大きな画像が出てますが、リンクしてよいかどうか。

2003年9月号


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 26日 金曜日 12:50:08)

「清朝体」はこの会議室の「森首相と日本語」で話題になっていますね。

『日本国語大辞典』で「しんちょう-かつじ」を引くと「「せいちょうかつじ(清朝活字)」に同じ。」と「見よ項目」(※)になっています。ところが、添えられた用例には「*新語新知識(1934)「清朝活字(シンテウカツジ)は〈略〉訛って『せいてう』ともいひます」」とあり、この新語新知識を書いた人は「しんちょう」を正としていたわけです。

「せいちょうたい」を引くと、用例に「*最新百科社会語辞典(1932)せいちょうたい 清朝体〔印〕しんちょうたいを見よ」。

私も「明朝体」が「みんちょうたい」ならば、「清朝体」も「しんちょうたい」でよかろうと思います。

※見よ項目 この言い方、辞書にないことばです。「空見出し」がふつうでしょうか。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 27日 土曜日 08:57:37)

>私も「明朝体」が「みんちょうたい」ならば、「清朝体」も「しんちょうたい」でよかろうと思います。

心強いことばありがとうございます。

また、面白い情報をお示しいただき、ありがとうございました。1930年代の新語辞典ではシンチョウが主たるものだったのですね。一方で、日国や前田年昭さん(リンク先)のように、現代ではセイチョウを主たるものとしているらしい。この転換がいつ、どのようにおこったのか、興味深いですね。その理由いかんによっては読み方を改めてもよいかな(改めなくてはいけない?)。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 27日 土曜日 23:27:04)

シンチョウからセイチョウに変わったというのでは少々言葉が足りな気味ですね。すみません。
「訛って」出発した、すなわちマイナスから出発したセイチョウですが、それが正当な言い方としてステータスを得るに至った過程に興味がある、ということになります。たとえば、「シンチョウ」と呼ぶことが何かのタブーに触れるようになったので言い換える必要もあったとか、植字工さんたちが「セイチョウ」と呼び始めたのを一種の専門用語として尊重したので広まったとか…… 書誌学者・印刷関係者の書き物に情報がないかしらん。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 27日 土曜日 23:59:53)

 誤植(ごちょく)というのも、ありましたね。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 08:35:39)

 間違えました。植字(ちょくじ)でした。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 18:12:25)

手持ちの国語辞典で調べていますが、明解−新明解が興味深い。次の二書で正反対の判定になっています。16年間(注1)に何が起こったのか。

明解国語辞典 改訂版 (昭和31 改訂32版)
しんちょお@[《清朝]−チョウ(名)(中略)(二)←清朝活字。──かつじD[《清朝活字](名)活字の字体の一種。筆で書いたような字体のもの。せいちょう。例、清朝。(「せいちょう」は立項せず)

新明解国語辞典 初版 (昭和47 第15刷)
しんちょう@〈−テウ〉[《清朝](中略)(二)→せいちょう
せいちょう◎(注2)(−テウ)[清朝]〔←清朝活字〕活字の字体の一つ。筆で書いた楷書(カイシヨ)体のような字体のもの。清朝体◎。例、新明解。〔誤って、「しんちょう」と言う〕

    注1:「16年間」とは書いたものの、新明解初版刊記の日付は第一刷のものだけなので、第15刷の刊行時期は正確には不明。何か見分け方があるのでしたでしょうか?
    注2:◎は「丸に0」。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 18:49:18)

『漢字百科大事典』「清朝体」によると「「清朝体」は明朝体・宋朝体などとの区別のための名称であって、中国の清(しん)代の書体とは関係がない」(倉島節尚)とのこと。このあたりが、現行の諸辞書などでセイチョウを正しいものとする根拠なのかもしれませんね。
 が、しかし。
 日本の都合で別名(もともとは弘道軒活字)を付けたのだから、中国の王朝とは関係ない、したがって「せいちょう」と読むべきだ、ないし読むはずだった。そういう理屈は成り立ちそうです。
 一方、「宋朝体・明朝体」に類推しなければ、「清朝体」は出て来ない。ならば「明朝体」をすでにミンチョウと読んでいるのだから、そのあとの王朝に由来・付会(?)する「清朝体」をシンチョウと読んでもよい、むしろ、そう読むのが正しい……
 別名を最初に付けた人に真相を聞いてみたいことです。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 19:10:32)

フォントハウスというところのHPに「清朝体活字に命を賭けた男」とのお話があったようですが、すでに消滅のもよう。残念。

Cooool Link


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 19:42:20)

下記ブックガイド中の〔A-55〕が参考になりそうですね。神崎正誼が弘道軒活字(清朝体)の発案者。

transart online shop


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 19:45:21)

ありました。<第20話>清朝体活字に命を賭けた男

archive.org


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 19:46:53)

 上のところからでは、パスエラーが出てしまいました。

<第20話>清朝体活字に命を賭けた男 


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 20:34:15)

おお! その手がありましたね。ありがとうございました。(^ε^)


skid さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 21:23:43)

推測にすぎないのですが、「みん」と「しん」の音が紛らわしいから、聞き違いを起こさないための言い換えが広まったのかも。
オリジナルから一般化された時点で呼び方を変えたなんてこともありそう。
「植字」も「食事」との区別を明確にする必要があったとすれば、むしろ「うえじ」でいいわけですが、どうなのかわかりません。
「伝播」が「電波」と紛らわしいため「伝搬」になったり、「輿論」が「世論」に書き換えられて「よろん」から「せろん」になったり、ということもあります。
読み方の変化は、清濁の違い以外にもかなりありそうですね。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 21:39:06)

> 一方、「宋朝体・明朝体」に類推しなければ、「清朝体」は出て来ない。

ゆえに「しんちょう」がむしろ正しい、と佐藤さんがいわれる論理は分かりやすいと思います。

「清朝体」の「清朝」が王朝名でないとすれば、しからば、その「清朝」はいかなる意味を表すのであろうか。清々しい朝?

聞き違いを避けるための一種の読み癖ならば、「しんちょう」が誤り呼ばわりされる理由はないことになりますね。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 28日 日曜日 21:40:53)

上記ことば足らずです。下のように訂正――

「せいちょう」が聞き違いを避けるための一種の読み癖ならば、「しんちょう」が誤り呼ばわりされる理由はないことになりますね。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 10月 02日 木曜日 22:11:48)

冒頭の「体育→たいく」の類例の追加のつもりです。

 それからまた「委員会{イインカイ}」というべきを、「イ」が落ちて「イ{傍点}ンカイ」になったりもします。こういうような、発音の不明確さが出てきます。(稲垣吉彦「話しことばと日本人」・金田一春彦他『変わる日本語』講談社 1981.11.30 p.128)


skid さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 19日 水曜日 07:43:09)

「植字(ちょくじ)」について。
岩波ジュニア新書『カラー版 本ができるまで』94ページより。

   文選で拾われた活字は、植字の工程に回されます。植字は「ちょく
  じ」と読みます。彫(ちょう)った字を植えるということから、そう
  いう読み方をするようになったといわれています。

「彫(ちょう)った」なんて言い方があったのでしょうか。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 12月 15日 月曜日 13:38:22)

唯川恵『夜明け前に会いたい』〔1996.04発表〕新潮文庫 2000.06.01発行 p.180)に

けれど俊市はまた沈黙を決めてしまう。
とあるのは、ひっかかります。「沈黙を決め込んでしまう」ならばまあまあ。もっとふつうに(私が)使うのは「だんまりを決め込んでしまう」。

とはいえ、『日本国語大辞典』によれば「決める」にも「決め込む」に通ずる使い方があるので(「図留〔ずる〕をきめてしまやアがったんさ」当世書生気質)、「沈黙を決め込む」が許せるならば「沈黙を決める」も許さなければならない道理です。

新潮社CD-ROMなどで主な文学作品を見ると「沈黙を……決め」「沈黙を……決め込(こ)」はないようです。「"沈黙を決め"」でGoogleにより検索してみると、70件ほどしか出てこず、しかも多くは「沈黙を決め込む」で、「沈黙を決める」はほんとうにごくわずかです。

しかし、聞いて分かることばではあります。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 21日 土曜日 18:53:56)

上の「タイク(体育)」「インカイ(委員会)」の類例として「ユーツ(憂鬱)」。

なおちゃん ユーツはなおりましたか(「なおちゃん」谷山浩子作詞作曲・歌 1983)
とあります。また半藤末利子『夏目家の糠みそ』(PHP研究所 2000)にもあるとの情報。(どのページかは不明)


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 21日 土曜日 20:18:40)

「唯一」の「ユイツ」もありますね。
(ここのところ、書き込みの時間がとれません。)


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 23日 月曜日 21:28:31)

パリ/マルモッタン美術館展が、東京都美術館にて開催中ですが、東京在住の友人によると、○にマの字がシンボルマークで(?)、ポスターにも堂々と「丸にマ」が印刷されているとか。モネらの絵があるそうですが、やっぱり「マルモッタン」のもじりも兼ねるんでしょうね。
ん〜、マルモッタン美術館の方にはどんな風に説明してあるのか、少々興味があります。ただ、それほど知名度が高くない(であろう)美術館を一挙に知らしめるのにはいいアイディアとも思います。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2004年 02月 23日 月曜日 21:34:40)

リンクを忘れました。ポスターと同じ画像だそうです。↓

東京都美術館


新会議室に続く

posted by 岡島昭浩 at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年09月14日

「腰をきる」という表現は正しいのか(山下たかし)


お世話になります。


さて、私の働く業界では、

「もっと腰を切れ」というはっぱのかけ方があります。


「○○君は腰が切れていない。

★★君は腰を切って営業にあたっているため、

成績がトップである。みんな、★★君をみならって

腰をきるように 云々」


しかし、私は思いました。


「腰をすえてとりくむ」

「スタートを切る」

という表現はあっても、これをミックスして

「腰をきる」「もっと腰を切れ」

などという表現は、日本語としておかしいのでは と。


そこで、日本語研究のサイト掲示板に記入しましたところ、

佐藤さんより、「聞いたことがない」などのアドバイスをいただき、

こちらで相談にのっていただけると、紹介していただきました。

こうして、書きこんでおります。


インターネット大辞林によれば、

腰をきるとは、スポーツの世界(ゴルフ、野球、弓道)で

使われていることはわかってきました。

「腰のきれが長打のポイント」「スィングの秘けつは腰をきること」

「腰を切ってかまえる」などです。


いずれも、腰を鋭く回転させること、あるいは、立ちあがること

を意味しているようですが、


さて、座ってないで営業に行け

という意味で、ハッパをかける言葉として適切なのかどうか。


ぜひ、みなさんのご意見をお聞かせ下さい。

http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/home.htm



岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 15日 月曜日 00:38:32)

 「日本語としておかしい」と判断することは大変難しいことで、せいぜい「どうやらそういう言い方をする人は(他には)居ないようだ」ということぐらいしか出来ません。また、「他には居ない」ということを証明するのも難しいわけですが。


さて、佐藤さんのところで、佐藤さんがお書きのように、「腰を上げる」の意味で使われているものがあり、これには、



手桶を引立《ひった》てて、お源は腰を切って、出て、溝板《どぶいた》を下駄で鳴らす。(泉鏡花「婦系図」)

平次は容易に腰を切ろうともしません。(『銭形平次捕物帳』「受難の通人」五)

「とっとと帰って貰おう。(中略)サア、早く腰をきらねえと、俺は明神様の氏子で気が早え……」(『銭形平次捕物帳』「富士見の塔」二)
などがあります。「座っていないで」という意味であれば、これでよいのではないでしょうか。


一方、問題の「腰を据える」「腰を入れる」のような意味のものもありました。

「いえいえ、むつかしいことはおまへんね。肩を入れはったら、ひとつ、腰をきっていただいたら結構だす」

「なんです……」

「いえ、さきに肩を入れておくれやす。……そうそう、そういうぐあいに……。それから、ひとつ、腰をきっておくれやす」

「……わたい……そんな痛いこと……ようしまへんで、モシ」

「いや、べつに刃物で切るのやおまへんがな。腰にグッと力を入れて、駕籠を持ち上げておくなはれ。」

(笑福亭松鶴『上方落語』講談社スーパー文庫 「ちしや医者」)


では、上方の言葉かと思ったら、次のようなものもありました。
重量のぐんとくるザルを持ちあげて、腰をきって投入する力しごとは、冬のさ中でも半裸の背に汗がしたたり流れるのだ。(『キューポラのある街』「職人気質」)


そういう意味があると知ってから『日本国語大辞典』を見ると、

*今年竹〈里見惇〉渡風流水・三「ゆっくり腰を切ったやうな、へんにしんねり強い守勢で、理路整然と」
も、こちらの方の意味ではないか、という気もいたします。


落語で、一方が意味が分からないのは、笑うべきことなのか、それとも、力仕事をする人の専門用語のようなもので、一般人にはもとより分かりにくかったのか、分かりませんが、いずれにせよ、この意味の使い方があったと言うことはわかりました。



山下たかし さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 21日 日曜日 12:53:36)

岡島さん、ありがとうございます。


ご丁寧な解説に感謝いたします。


今回のことで、私も大変悩んでいたのですが、

結局、意味が通る使い方なら、一部業界だけでも使っていけばよい

と、判断すればよいのでしょうか。

それとも、できるだけ万人に通用する日本語を適切に使うべき

と、判断すればよいのでしょうか。


確かに、各種文学で使われ、武道など伝統スポーツの中で使われています。

岡島さんの解明で、より認識は深まりました。

同時に、私としてはなお、「この方々は特異なものいいをする」

と受けとめられるような表現はあらためようとしている一人ですので、

できる限りどなたにも通用する言葉を使用したいと思うのですが。


私以外にも、業界用語に違和感を感じる方っているのではないかと

勝手に想像しております。


いずれにせよ、難しい問題のような気もします。


岡島さん、どうもお手数をおかけいたしました。


posted by 岡島昭浩 at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年09月03日

専門用語はおもしろい(佐藤)


限られた世界で通用するからこそ、日本語表現の最前線かもしれないし、次代の表現の先取りかもしれない…… などと考えずに、面白い現象とか言い回しとかがあったら教えてください。


まずは、「○○を発生する」(「気になることば」では既出)。理系ではよく使うようです。「"を発生する"」でググったら約85,900件だそうです。違和感がなくなるのも遠くない?

燃料電池



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 00:51:27)

googleでの検索結果をちょっと詳しく。


「"を発生する"」約85,900件

「"を発生させる"」約121,000件(こちらは違和感がない用法)

「を発生する」が多いといっても、やはり「を発生させる」の方が多数ではある。


上のリンクを読んでいたら「副生する」という言い方がありました。これも検索します。

「"を副生する"」約104件中

「"を副生させる"」4件

こちらは逆転。「副生する」が、「発生する」ほどには一般性がなく(というより一般にはまず使われない)、よりいっそう専門用語的なため、独自用法で使われやすいのかと。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 15:20:41)

第一に、外国からカルテルを通じてウランを購入し、通常の原子炉(軽水炉)でこれを燃焼する。〔広瀬隆〕(『日本の論点'95』文藝春秋 1994.11.10 p.346)
私ならば「燃焼させる」と行きたいところです。広瀬隆氏は、早稲田大学理工学部卒。理科系の言い回しでしょうか。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 09日 火曜日 20:26:55)

「平成一年」

「〈元号〉元年」ではない書き方、史学方面の文章でよく(普通に?)見受けますが、少しずつ広がっているのでしょうか。イデオロギー上の理由で「元年」を用いないのでしたか。

あけましておめでとうございます



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 11日 木曜日 05:10:58)

「片泊まり」

 一泊朝食付きのことだそうです。夕食が付くと「両泊まり」かと思うのですが、そういう言い方はないようです。単に「泊まり」というのが2食付きで、夕食なしが変則だったので出来た言い方でしょうか。

 リンク先に「京都ではこう呼びます」とあるので、方言語形でしょうか? あるいは他の地方でも言うことがあるのか。

 とここまで書いてきて念のためにインターネット版『大辞林』を見ると、「片旅籠(かたはたご)」への空見出しでした。

京の町家で”片泊まり”



UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 11日 木曜日 22:44:41)

↓のようなページを見つけました。

 素泊まり:お泊まりのみ

 半泊まり:ご朝食のみ

 片泊まり:ご夕食のみ

 本泊まり:一泊二食付き

だそうです。

ご利用料金



UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 11日 木曜日 22:47:45)

「夕泊まり(=一泊夕食付)」という用語も発見。

朝日屋旅館料金表



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 12日 金曜日 00:18:35)

UEJさん、素晴らしい用例をご教示いただき、ありがとうございました!

1)一食欠けるのを「片泊まり」と「半泊まり」で表す荒技。

 もともと「片泊まり」と言っていたところに、同じ意味の「片泊まり」が入ってきたけれど、駆逐できなかった。そこで、両者併用する代わりに意味をずらすことにした…… といったストーリーが浮かびます。方言地図上ではおなじみ。

2)一食欠ける「片・半泊まり」に対して「本泊まり」。

 さすがに「両泊まり」では、あんまりですよね。反省(笑)。

3)「夕泊まり」

 現実的な表現で分かりやすい。「半泊まり/片泊まり」では混乱しやすいことから生まれた表現なら、お話としては興味深いのですが、そこまで考えるのはそれこそ考えすぎかもしれませんね。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 12日 金曜日 01:51:50)

部分だけ、という連想で「みどり」というのを思い出しました。

「時代物は原作がおもしろい。全段通すと部分の良さが立ち上がる。部分だけの、みどり上演で芸だけ見ろと言っても若い観客には無理。ハムレットだって墓掘りの場面だけやってもわからない」〔市川猿之助〕(朝日新聞夕刊 2000.02.14 p.17)
何これ、「みどり」は「緑」? と思って『大辞林』をみると「見取り」の項にありました。
(「緑」とも書く)歌舞伎・浄瑠璃を、通し狂言として上演せず、一幕・一段ずつを適当に組み合わせて上演するやり方。幕末以降はこのやり方が多い。「―狂言」
この「『緑』とも書く」というのはおもしろいと思いました。新聞記事はそこを踏まえてかな書きだったか。『日本国語大辞典』には江戸時代の用例も載っています。


通にとっては当たり前のことばかもしれませんが、私は「通し狂言」しか知りませんでした。一般にも知られていないであろうことは、Googleを見てもわかります。「"通し狂言"」の2710件、「"通し上演"」の766件に対し、


 ・「"見取り狂言"」は21件、「"緑狂言"」は0件、「"みどり狂言"」は20件。

 ・「"見取り上演"」は6件、「"緑上演"」は0件、「"みどり上演"」は、上記記事の引用1件、他の関係ないの1件で計2件。

 ・「"見取りで"」の形は135件あったが、そのうちそれらしいのは7、8件程度。


通は「見取り」「見取り」と多用しているのかもしれません。



Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 12日 金曜日 01:54:48)

> ・「"見取りで"」の形は135件あったが、そのうちそれらしいのは7、8件程度。


これは探し方が悪いかもしれません。もう少しあるかもしれません。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 12日 金曜日 10:44:08)

訂正。ついでにちょっと書き換えます。「片」が先なら「半」が後、「半」が先なら「片」が後、という風に。


誤:もともと「片泊まり」と言っていたところに、同じ意味の「片泊まり」が入ってきた

正:もともと「片(半)泊まり」と言っていたところに、同じ意味の「半(片)泊まり」が入ってきた



UEJ さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 13日 土曜日 09:43:06)

↓のページには「チェックイン20時以降は朝泊まりとなります。」とあり。

おそらく朝食のみということなのでしょう。

海潮温泉 あめや荘別館



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 13日 土曜日 15:44:55)

「緑上演」「朝泊まり」! ここまで興味深い例が出てくるとは……


「見取り→緑」の連想で、ジョウビタキという小鳥の漢字表記を。

図鑑では「上鶲」「尉鶲」と二様あり、どうやら前者が優勢のようです。以前、菅原浩・柿澤亮三編著『図説日本鳥名由来辞典』(柏書房, 1993)でみたら、どちらにも古めな(といっても室町くらいだったか)典拠があり、どちらに決めるかは保留していたように思います。

 さいわい『日葡辞書』にも立項されていて「I∧obitaqi」。オ段長音が合音なので「尉鶲」が正解かなと、自分ではけりをつけています。たしかに頭が銀白色なので言い得た名前だなと納得しているところ。ところが、『邦訳日葡辞書』には訳者注として「I∨obitaqi(ジャゥビタキ)の誤りか」と開音を示唆しています。「上鶲」とのみ表記された参考文献に依ったのでしょうか。

 ここまで書いてきて、あるいはすでに誰かが指摘してそうな気がしてきました。『日国2』『時代別室町』はともに「尉鶲」のみ掲出。

ジョウビタキ(タジマニア特別保護区さん)



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 18日 木曜日 22:44:39)

そうそう、花火の開き方もこちらにリンクさせてください。


  境目が二つあるのが八重芯(やえしん)

  境目が三つあるのが三重芯(みえしん)


逆ではありませんよ。



大曲の花火とは(一番下の方に記述あり)



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 29日 月曜日 16:35:32)



 まえに製本屋さんの符牒を紹介した。当然、活版屋さんには”文選読み”という文字(活字)の呼び名がある。例えば、(下段は同音異字の例)

  日 にちヒ     (きさきヒ   妃)

  本 もとホン    (はしるホン  奔)(他四例を省略──佐藤注)

などというように、和訓と音を同時にいい、文選棚に残り少なくなった活字を補給させたものだ。(横山和雄『出版文化と印刷』出版ニュース社 1992)



 普通なら、前がモンゼンで、後がブンセン。が、読み進めてきて「文選棚」と出てきた瞬間、印刷業界だと前のもブンセンヨミと言うのかもしれない、などと思ったことでした。振り仮名はなし。どなたか御教示を。



佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 30日 火曜日 00:57:50)

これでいいのか…… 実はこれが正しい、とか。↓

書誌データの作成及び提供(国会図書館)



道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 30日 火曜日 02:31:29)

専門用語ということで・・・黒部ダムに行ったのですが、そこに書かれていた言葉で「打設(だせつ)」というのが、コンクリートの打ち込みのの様です。私は初めて耳にしましたが、土木関係者では常識の言葉のようで、Google検索でなんと39万件(!)もありました。



後藤斉 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 30日 火曜日 14:50:25)

>Google検索でなんと39万件(!)

普通に「打設」を検索すると「打 設」を検索した場合とほぼ同じ数字が出ます。語の検索としては、したがって、フレーズ検索結果の「約22,900件」の方が実情に近いものと思います。これでさえ、実際には何を数えて出てきた数字なのか、私にはよくわからないのですが。


圧接技術の用語として「かしめる」という動詞があって「かしめ工具」といった

使い方もするようです。『日本国語大辞典』には方言としか載っていないのですが。

Google検索  "打設"



NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 02:18:14)

「元年」のこと。


表計算ソフトのExcelは日付を元号で表示すると「1年」になってしまいます。

入力する際も「元年」と書くと日付とは認識せず、文字扱いになります。


シリアル値 yyyy/m/d形式 ggge年m月d日形式 ge.m.d形式

  4,594  1912/7/29   明治45年7月29日  M45.7.29

  4,595  1912/7/30   大正1年7月30日  T1.7.30

  9,855  1926/12/24  大正15年12月24日 T15.12.24

  9,856  1926/12/25  昭和1年12月25日  S1.12.25

 32,515  1989/1/7   昭和64年1月7日  S64.1.7

 32,516  1989/1/8   平成1年1月8日   H1.1.8


仕事上は元号表記を一切使わないので支障はありませんが、これだけはずっと気になっています。



NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 02:31:54)

「押下」


「おうか」と読みます。国語辞書に載っていませんが、電気通信業界ではふつうに使われています。「電鍵押下」「改行キー押下」など。


「電釦押下」というのも何度か見たことがあります。読み方は不明です。



NISHIO さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 16日 日曜日 02:54:56)

「活線(かっせん)」

通電状態の電源線。「活線作業」などといいます。広辞苑には載っていませんが、ハイブリッド新辞林にはありました。


「厚膜(あつまく)」と「薄膜(はくまく)」

半導体用語です。「厚膜IC」「薄膜技術」など。なぜか片方だけ湯桶読みです。

植物組織のほうは「厚膜(こうまく)細胞」と言うようですが。



高杉親知 さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 30日 日曜日 16:49:42)

初めまして。高杉と申します。


「律速(りっそく)」は需要が大きいようで、普及させる会まで存在しますね。

http://www.h3.dion.ne.jp/~nahonoro/


ディスプレイ業界で使われている「むら」(表示輝度の不均一性)はいまや mura として英語でも使われるようになってきています。

「画素(がそ)」は画面の各点のことですが、赤緑青の三原色の場合、三画素で一まとまりになります。これを「絵素(えそ)」といいます。

画素のうち、回路などを除いて実際に光が通る部分を「開口部(かいこうぶ)」といいます。建築の流用でしょうか。

製造途中の不良判定基準が最終段階のものより厳しい場合、不必要に不良品と判定されてしまいます。これを「逆鞘(ぎゃくざや)」といいます。


posted by 岡島昭浩 at 18:50| Comment(0) | TrackBack(1) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2003年08月31日

常套句の出所―狭いながらも―(Yeemar)

「"狭いながらも楽しい我が家"」を「Google」で検索してみると約1,120件でした。(「""」は、このフレーズを一体として検索するための印です。ちなみに、「"狭いながらも楽しいわが家"」は約108件、「"せまいながらも楽しい我が家"」は約77件中、「"せまいながらも楽しいわが家"」は約18件)決して少ない用例数ではありません。

一方、「青空文庫」「新潮文庫の100冊」その他のデータベースで「ながらも楽し」を検索してみると、1件も出てきませんでした。著しい偏りがみられます。

このフレーズを使った例のうち、私の知る最も古い例は、堀内敬三訳詞の「あお空」(「私の青空」、原題「MY BLUE HEAVEN」)の一節で、この歌は1928(昭和3)年に二村定一が吹き込んでコロムビアレコードから出ています(B面は「アラビアの唄」。『昭和流行歌総覧』柘植書房による)。

歌詞はCD「藤山一郎 我が青春」によれば「せまいながらも楽しい我が家/愛の灯影のさすところ」となっています。藤山は「ほかげ」と歌っていますが、二村定一の歌を聴いた記憶では「愛のひかげ」だったはずで、そのほかにも微細な違いがあります。

いずれにせよ、このフレーズはこの歌から出たのであろうと理解しており、まあそれで大丈夫だろうと思っているのですが、これより古い例はありますでしょうか。ご存じの方がいられましたらお教えください。

(※慣用句になりきっていない「常套句」の話題としては、別スレッドで「一つ学問をした」というのを挙げたことがあります。)


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 31日 日曜日 21:22:50)

 ちょうど、大滝詠一関係のMLで、My blue heaven 「私の天竺」が話題になっていたところだったので、驚きました。大滝詠一ファン(「ナイアガラー」といいます)による二村定一のページをリンクしておきます。

 「狭いながらも楽しい我が家」は、私も「私の青空」以前は存じません。これ以降で古いところでは、石坂洋次郎「若い人」十に見えます。

新明解の「たのしい」の用例としても第三版以降、また三上章『現代語法序説』でも二度ほど出てきますね。

二村定一 "BEST ALBUM"


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 01日 月曜日 00:30:43)

多様な用例のご提示ありがとうございます。文法の本でも有名な例文なのですね。

石坂洋次郎の用例は以下のものでしょうか。「そのもの」という感じではないようですね。作品は1937年改造社から出版とのことです。

こんなこと、貴女に報告していると、何だか不潔なイヤらしい家庭のように思われるでしょうが、実際には信頼、礼儀、節制が保たれて、どこの家よりも楽しい、住みよいわが家でした。(新潮文庫1971年改版 上巻 p.147)


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 01日 月曜日 02:01:39)

きちんと書かずにすみません。「下の十」であるようです。

職員達は最後の一人が姿を消すのを待って、碌に口も利かず、顔を見合せるのも避け気味に大急ぎで支度を整え、凍るような玄関先の闇の中に、肩をすぼめて思い/\に散り去った。狭いながらも楽しい我が家へ……。

「私の青空」関連のページへの直リンクです。

View Point No.1-5


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 01日 月曜日 02:21:18)

リンクしたページが面白くて読みすすめていましたら、堀内敬三『音樂五十年史』鱒書房に次のように書いてあるということです。

『狭い乍らも樂しい我が家』と云ふ通勤市民的な生活感情によつて、当時の人心に訴へたのであらう。曲はジャズとしては温和しい旋律的なものであるが、いづれにせよダンス流行の波に乗つて流行つた軽薄浮薄な音樂である
日本の歌謡曲(そのロク)


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 01日 月曜日 10:51:50)

リンクしていただいたページを見ておりますと、私が折々に気まぐれに買ったCDやら本やらの名が散見されます。私はべつに戦前・戦後のコミックソングを狙って買っているわけでも何でもないのですが、とどのつまり、そういうものが比較的手元に集まったようです。そういえば、吉田日出子「上海バンスキング」の中でもけだるいバージョンの「私の青空」がありました。大瀧詠一氏がラジオでこの種の話をしているということは聞きますが、貴重な話に違いないと思いつつ、ついぞ聞く機会に巡り会いません。

話がそれますが、上記「日本の歌謡曲(そのロク)」にある

> 『茶目子の1日』ですが、CDにもなってますので、

という記述は意外でした。検索してみると、なるほど「茶目子の一日」(ビクターエンタテインメント ASIN: B00005GYFJ)として1996年に出ています。

しかし、この曲の(下)には自主規制に抵触すると思われる歌詞が出てくるのですが……。先生の二村定一が、茶目子の平井英子に読本を読ませる場面で、「かまぬすびと」の話が出てきます。「♪ゐざりは大そうよろこんで、その釜をあたまにかぶつて、両手をついてゐざり出しました……」という、読本の文章そのままが歌われています。当時、この話が教室で人気があったことをうかがわせるものですが、これもCD化されているのかと疑います。カットされていそうな気がします。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 01日 月曜日 11:35:49)

 いや、しかし、Yeemarさんとは、本当にカラオケ屋あたり(持ち込み音源可能なところ)でゆっくりと語り合いたい気分です。

 私も、大滝詠一が私の好みに合うと気づいたのが、日本ポップス伝の放送よりもあとでしたから、残念ながらほとんど聞いておりません。文字化されたもの(リンク参照)を読むだけです。

なお、本題の「狭いながらも楽しい我が家」ですが、その源流とまで言えるのかはわかりませんが、「悲しいながらも嬉しかろ」というような俗謡があったかもしれない、などとふと思ったのですが、今のところ、用例はありません。

OHTAKIIのさえずり


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 02日 火曜日 00:44:13)

「「愛の日陰の差すところ」だとず〜っと思っていました。」と、あるので、「ひかげ」と歌っていたことがしれます。

また、コロンビア(ニッポノホン)だけでなくビクター版もあるということです。

二村定一


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 02日 火曜日 14:17:17)

コロムビア盤は「あお空」と書きましたが、レーベルでは「あほ空」なのですね。阿呆空。仮名遣いの誤り。

「夕暮れに仰ぎ見る 輝く青空」と始まる歌ですが、「夕暮れ空」といえば暗い赤色という語感があり、「輝く青空」といえば日中の明るい空という語感があり、両立しにくいものです。あたかも、ルネ・マグリットの絵「光の帝国」のように、地上は暗く、空は輝くばかり青いという光景が目に浮かびます。絵にはしにくい歌詞です。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 02日 火曜日 14:21:32)

「夕暮れに阿呆が見る 私の阿呆面」ならば矛盾はありません。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 18日 木曜日 01:58:11)

「青空荘」であるので、夕暮れに見ることが出来るのだ、というのを読んだ気がしますが、前掲のMLでの発言だったと思います。

歴史的仮名遣いで「を」と書くべきところを「ほ」と書くのは、「シクラメンのかほり」と同様ですね。但し「かほり」は定家仮名遣には合致していますが、「あを」は定家仮名遣でも「あを」のようです。


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2003年08月29日

「です」の拡張

 〈「です」の拡張〉という題で書こうと思っていたのと似たことが、佐藤さんによって書かれていました。
ニュース番組やその内容要約などで、「名詞Aガ、名詞Bダ」文型、必要以上に使ってるように思いませんか? (中略)たとえば、「連続ひったくり犯が逮捕です」

私がニュースで特に気になるのが「次です」。それから同時通訳での「誰それです」(「今、発言しているのは誰それです」の意味で)と、(「今、御覧頂いている映像は」と言わずに)「○○です」。

「福岡です」「仙台です」には違和感を感じないので、単なる慣れの問題かとも思いますが。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 31日 日曜日 20:13:31)

「次です」じゃ「次(のニュース・話題)です」という省略形だと思います。新聞で言うところの「見出し」のような「テレビニュースの接続詞」でしょうか。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 08月 31日 日曜日 21:02:36)

「次のニュースに参ります」「次のニュースをお伝えします」が、「次のニュースです」になっているのが、「ですの拡張」なのです。

前もどこかで書いた「恐縮いたします」が「恐縮です」になるのも同様でしょうか。

佐藤さんへのリンクがなされていなかったので、張り直します。

充電日記2003年8月


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 02日 火曜日 10:17:38)

文構造を考えると、2)なんでしょうね。
 1) [12連続ひったくり犯が]22逮捕です]21
 2)[123連続ひったくり犯が]33逮捕]32です]1

 リンクしていただいたところには「新聞の見出しの影響でしょうか」と書いたのですが、たまたま来室されたK先生に話題をふると「(テレビなんだから)画面に出る字幕の方が近いのでは」と。そうですね、ニュースの内容要約や見出しが字幕にも出ますが、それに「です」を直結させた表現かもしれません。
 とりあえず、こんな風に考えています。各ニュースには名称が付けられており、それが新聞の見出しの作り方を見習ったものであって、それにデスを直結したのが「連続ひったくり犯が逮捕です」タイプの拡張になるのかなと思っています。
 ただ、そう考えると「次です」「恐縮です」はまた別途考えることになりそうです(でも、何か関係はありそう。ごくごく低い次元では「言い慣れ」とかも視野に入れて)。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 02日 火曜日 23:29:29)

 佐藤さんのおっしゃるように、また道浦アナもそういう意識をお持ちのようですが、「見出し」ということと関係しそうですね。

 今日は、久しぶりに十時のNHKニュースをじっくりと見たのですが、たしかに、「……です」は、見出し的なものに現れやすいようですね。

 「次です」の他に、「……について、レポートです」「……の事件で、新たな展開です」など。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 03日 水曜日 16:08:22)

うなぎ屋で叫ぶ「ぼくはうなぎだ。」という文のことを連想します。

順序として周知のことから書きますが、奥津敬一郎氏らは、この文を「ぼくはうなぎを食べる。」ということだと解釈し、「だ」は述語を代用すると考えました。つまり「だ」は「食べる」の意味を表しているということです。

この「主語代用説」については、「ノダ説」「コピュラ説」「分裂文説」などの反論があって、奥津氏『「ボクハ ウナギダ」の文法』にはその紹介および再反論も増補されています。ちなみに、「分裂文説」というのは、「ぼく(が食べたいの)はうなぎだ。」と解釈する説です。

今、仮に奥津説に従い「ぼくはうなぎだ。」の「だ」(「です」)を述語の代用としますと、「……について、レポートです。」「……の事件で、新たな展開です。」は、何もめずらしくないことになります。この場合の「です」は「……についてレポートをお送りします。」「……の事件で、新たな展開がありました。」などを「代用」していると考えることが可能だからです。

ところが、われわれの直感では、このような場合、「です」が述語を代用しているとは信じられません。「……について」と来れば、あとの述語には用言が来てほしいのですが、「レポートです。」は、どう見ても体言述語で、「……について」とうまく呼応していないようです。

つまり、「だ」は「(レポートを)お送りする」の代用にはならないし、そこから考えると、「(うなぎを)食べる」の代用になるというのもあやしくなる。奥津氏の説はここに来て難所にぶつかるのである――という考えが湧きます。

ところが逆に、「……について、レポートです。」のような言い方が現実にあることを重視すれば、やはり「だ」(「です」)は「お送りする」(「お送りします」)の代用になっていると考えることもできます。そうすると、「……について、レポートです。」「……の事件で、新たな展開です。」などの言い方は、「だ」(「です」)の「拡張」ではなく、「だ」(「です」)の本来の用法に基づいたふつうの言い方ということになります。

以上、奥津説とからめてこの問題を考えてみたのですが、いかがでしょうか。

一方、「連続ひったくり犯が逮捕です。」の場合は、「です」が述語(たとえば「逮捕されました」)を代用しているわけではなく、述語の一部(「されました」)だけを代用(ということばが使えるなら)しているということになり、奥津説では解けません。ただ、「連続ひったくり犯が逮捕をされました。」ということであれば、「ぼくはうなぎだ。」と本質的に同じ「ウナギ文」ということになります。

「[連続ひったくり犯が逮捕]です。」というような、字幕スーパー引用語法とみれば不自然さは解消されますが、このような言い方は、字幕スーパーや新聞の見出しと関係なく用いられるようにも思います。
 ・「(店頭で)おっ、新製品が発売だ。」
 ・「こんなに成績が悪いのでは、今に契約も解除だ。」
 ・「天ぷらそば一丁〔が〕、追加です。」〔いずれも作例〕
これらは、「ウナギ文」と考えて解けるものか、それとも、やはりテレビニュースと同じく一種の「字幕スーパー引用語法」なのか、この点、判断に迷います。

最後に、「次のニュースです。」「福岡です。」などは、これはその場の状況に支えられて、体言述語だけをぽっと投げ出した言い方だと思います。「こんばんは、7時のニュースです。」「ごはんです。」「閉店でーす。」「はい、おつり。」「はい、夕刊。」などと同類であると思いますが、いかがでしょうか。

なお、私はニュースを聞いていても「……について、レポートです。」のたぐいの言い方は聞き逃していました。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 03日 水曜日 21:07:05)

 なるほど、「ですの拡張」ではなく「ですの安易な使用」というのがよいのかもしれません。

 動詞で終わる文に比べて「名詞+です」で終わる文は作りやすいけれどもやや意味が曖昧になりやすい。あるいは舌足らずな感じを持つ。従って、ニュースなどの文には余り向かない。しかし、近年はそれが安易に使われるようになってきた。

というところかもしれません。

 なお、書こうと思っていた「ですの拡張」には、

今の気持ちを一言で言いますと、どうなりますか?
やったーです。

のようなものも考えていたことを思い出しました。なんでもかんでも名詞化して使うことも、日本語としては許されるものではありましょうが(松下のいう「模型名詞」はそれでしたっけ)、近年それが著しいものにも思われます。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 03日 水曜日 21:56:33)

2文の混交で解釈できないかな、と安易に考えたりもしますが、ベースには下にリンクした論文があります(第七節、涙をにじませながら読んだという先輩がおりました)。

「切符の切らない方」の解釋


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 03日 水曜日 22:55:26)

「やったーです。」というような言い方は、今まであまり注意しておりませんでした。「『ファイト一発!』な彼」(週刊朝日 2001.11.02 p.16)というような安易な連体修飾についてはよく指摘されますが、さては双方軌を一にする現象でしょうか。

「連続ひったくり犯が逮捕です」は、上では無理やり(?)「ウナギ文」と解釈してみたのですが、「連続ひったくり犯逮捕です」などというニュースもありそうです。こうなるとウナギ文という解釈はむずかしく、「字幕スーパー引用語法」という考え方の方がしっくりきます。こういう言い方は最近のものか、明治大正にはなかったのかも気になります。

「……について、レポートです。」は、「羅馬字にて日本語の書き方」というような「〜にて」と連用修飾節のあとが体言で終わっている言い方とは関係ないでしょうか。「羅馬字にて……」は文のねじれでしょうか。


いらかおる さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 11:50:25)

けさのNHK「おはよう日本」の気象コーナーで、「前線に注目です」と言っていましたが、これは無理でしょうね。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 13:19:05)

ウナギ文(構文?)を当てはめるなら、次のようかと。

 (次のニュースは) 連続ひったくり犯が逮捕 です。
  僕は       ウナギ         だ。

( )内が省略されたとみる。省略は、表す必要がなければ実現されるわけで、質問への答えでもそう。質問内容は繰り返さなくても(ないほうが)よい。

 (今の気持ちは) やったー です。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 14:26:20)

私は、

連続ひったくり犯が逮捕だ。
ぼくがうなぎだ。

というふうに分析すれば、ウナギ文として扱えると思ったのです。「は」と「が」を変えていますが、
  「(おいおい、うなぎを注文したのは彼じゃないよ、)ぼくがうなぎだ」
というのもウナギ文と思われますから、かまわないでしょう。
  「例の連続ひったくり犯は、逮捕だ。」
とすれば、よりウナギ文らしくなります。

「おっ、新製品が発売だ。」「なんてことだ、広島のみならず長崎にも原爆が投下だ」「気の毒に、田中君もリストラか」「あの凸山代議士も、ついに逮捕か」「連続ひったくり犯が、逮捕だ」などはいずれも一種のウナギ文と考えることもできます。この場合、「だ」は「(〜を)された」という述語を代用していることになります。

一方、「次のニュースは[連続ひったくり犯が逮捕]です」とも解釈することができますが、この場合は、「次の歌は[ジュリーがライバル]です」「私の信条は[笑いが一番]です」などと同じく、ウナギ文とは考えにくいのではないかと思います。


佐藤 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 17:34:37)

ああ。「ウナギ文」を出したのは不用意でした。「うなぎ」の位置にくる要素の性格など、あれやこれや考えているうちに混線しました。省略とした要素との関係が等位過ぎますね。御指摘多謝。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 23:04:09)

スタジオには政治部の渕上記者です。(2003.09.04 NHK「ニュース10」今井環キャスター)
この言い方は以前から気になっていました。これは、「渕上記者に来ていただいています」と言えば視聴者に失礼で、かといって、「渕上記者に来てもらっています」「渕上記者がおります」と言えば尊大のようで、どうにも困った挙句、述語を略したものかと思っていました。
ではここから、秋元解説委員とともにお伝えします。(2003.03.20 NHK 武田真一アナウンサー)
これならばスマートかも知れません。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 04日 木曜日 23:58:39)

「やったーです」は、「ですの拡張」というよりも、「安易な名詞化」であると書きました。「安易な名詞化」は、「あなたの〈うれしい〉が、私の〈うれしい〉です」のようなものを考えていましたが、これは引用の問題かもしれない、と。そして、下のスレッドと関連するものであろうと。

「やったー、という感じです」をここに書いていたことでもありますし。

会話に於ける直接話法の疑問文で敬語付き


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 18日 木曜日 21:23:02)

「あなたの〈うれしい〉が……」の類例を。

魚料理の「知らない」「わからない」にお答えします!(「オレンジページ」2003.10.02号)〔朝日新聞2003.09.17 p.23〕
これはカッコ付きで引用そのものですが、「魚料理に関する疑問・質問にお答えします!」でないところが今風です。


道浦俊彦 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 19日 金曜日 07:59:59)

スタイリストの女性(20代前半)に、「来週、旅行に行くんだ」と話したら、
「いってらっしゃい、です。」
といわれました。これで思い出したのは、中学や高校の部活動で、女子バレーなどで、後輩が先輩に向かって使う、
「先輩、ガンバです!」
という言い方です。「頑張って下さい」という意味なのでしょうが、「ガンバ!」という掛け声に「丁寧語」にするために「です」を付けている、ちょっと変わった形ですが、中高生には定着しているのではないでしょうか。


岡島昭浩 さんからのコメント
( Date: 2003年 09月 19日 金曜日 09:07:26)

「いってらっしゃい、です」
これはよい例ですね。読点を書いてらっしゃるのをみると、「です」の前にはポーズがあるのでしょうか。
「ガンバです」は、ポーズなしで言っていそうですね。そういえば「はいです」というのも聞いたことがあります、ポーズなしで。

「こんにちはです」もあったような。「ちわー(っ)す」の基底形(?)か。


Yeemar さんからのコメント
( Date: 2003年 11月 05日 水曜日 22:41:00)

2003.11.05 フジテレビ「アサヒビールチャレンジ・アジア野球選手権2003兼アテネ五輪最終予選「中国×日本」」で、長坂哲夫アナウンサーが

タイガースの安藤優也がマウンドです。(
野球中継、ことに民放のそれはあまり見ませんが、常套句でしょうか。これも「ぼくがウナギです。(彼ではないよ)」の類例といえるでしょう。


posted by 岡島昭浩 at 20:30| Comment(1) | TrackBack(1) | ■初代「ことば会議室」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする