2006年03月21日

ボンサイ?

ワールドベースボールクラシックで日本チームが優勝したというニュースを、アメリカCBS放送のホームページで見てみました。すると、
Bonsai!
Ichiro came over in 2001 and displayed what the Japanese can do on the field.〔下略〕
画像には、両手を上げてガッツポーズをする大塚投手の姿が出ています。ここは「万歳」とあってほしいところです。

盆栽も海外で人気があるやに聞いていますが、そのせいで、「盆栽」と「万歳」が混同されたのでしょうか。Bonsaiも発音のしようによってはバンザイになりそうです。
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2006年03月20日

リュックは前に

2006.03.12、ふだん乗らない京王線電車内で、マナーを呼びかける張り紙を目にしました。その張り紙には
リュックは前に
Hold your baggage.

1人分に1人
Please sit close to others.
と書いてあります。

英語は、日本語の直訳ではありません。「Rucksack front(?)」とか「One person for one seat(?)」では意味不明になるのでしょう。

上記の日本語は標語ふう、英語はふつうの文のように書いてあります。英語をもう少し標語ふうに書くと、どうなるだろうかと思います。

この張り紙に関する言及をネットで探すと、2004年のcopyright表記のある記事がありました(Southpole Online 不思議な看板達)。私の気づいたのは遅かったのです。ただしこの記事では、後半の文句には触れていません。
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2006年02月22日

ぼかし表現・強調表現(日―朝)

NHK教育「アンニョンハシムニカ ハングル講座」(2006.02.21放送)を見ていたら、興味深い比較をしていました。このような比較の話は、毎回あるのかどうか、知りません。

・ぼかし表現に関して。日本語の「〜みたいな」「〜って感じ」などの言い方は朝鮮語にない。その代わり、「ヌン ゴッ カッタヨ」(〜するようです・〜すると思います)、「ン ゴッ カッタヨ」(〜のようです・〜だと思います)などと言う。例、「チェミインヌン ゴッ カッタヨ」(面白いみたいですよ)。ほかにも、「ムォ」(なんか)、「ジョム」(ちょっと・少し)、「クニャン」(ただ・なんとなく)などがある。

・日本語「彼氏かっこいいって感じですね」は、朝鮮語では「彼氏かっこいいようですね」(ナムジャチング モシンヌン ゴッ カッタヨ)。相手の答えは、「なんか、まー、ちょっと、あれですよ、もう」(ムォ、クニャン ジョム クロッチョ、ムォ)。

・朝鮮語では強調の表現が多い。「マク」(やたら・むやみに)、「ッタク」(きっちり・ちゃんと・ぴったり)、「チンッチャ」(ほんとう)、「アジュ」(とても)など。日本語では「あの人 かっこいいかも みたいな 感じで とかいってて」と「ぼかし表現」を重ねるが、朝鮮語では「チョ サラム チンッチャ ジョンマル モシッソヨ」(あの 人 ほんとう すごく かっこいいです)のように強調表現を重ねる。
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2005年12月10日

可能形にならない動詞

中国人留学生から、日本語の動詞には、可能形にしたり、可能を表す助動詞「れる(られる)」をつけてよいかどうか、迷うものがあると聞きました。その人は、
1.「この荷物、もう冷蔵庫に入〔はい〕らない」を、「この荷物、もう冷蔵庫に入〔はい〕れない
と言いたくなるそうです(中国語では「東西不能放進氷箱里」〔モノを冷蔵庫の中に入れることができない〕がふつうとのこと)。また、
2.「もうこんな時間?! 終電に間に合わない」を「もうこんな時間?! 終電に間に合えない」
と言いたくなるそうです(中国語では「我不能〓{走にょうに干}上電車」〔電車に追いつくことができない〕)。

私(Yeemar)が思うに、「荷物が入〔はい〕れない」と言わない理由は、「人が主語でないから」という説明でもすみそうです。いっぽう、「間に合えない」と言わない理由は、「間に合う」にすでに可能の意味が入っているから、というのがいちおうの説明でしょう。しかし、「可能の意味が入っている」と判断するのはなぜか、ということになると、簡単ではありません。どう説明すればいいのか、いまのところ、分からないままです。

まとめると、

1. 「○○が」の部分が人でなければ、可能を明示する形はとらない。
例、「(なべにふたが)合う・(私に音が)聞こえる・(病気が)治る・(荷物が冷蔵庫に)はいる・(私に景色が)見える・(私にバイトが)見つかる・(私に答えが)分かる」などは、「合える」「聞こえられる」「治れる」などとは言わない。

2. 「可能」または「自然にそうなる」の意味が入っている動詞は、可能を明示する形はとらない。
例、「(私が大学に)受かる・(私が行かずに)済む・(私が電車に)間に合う・(私が/私の気持ちが)安らぐ」など。

このうち2は、「可能の意味が入っているかどうか」を判断する基準が人によって違うと考えられます。たとえば、「済む」も、私は「済める」とはまず言いませんが、「管理職 ならずにすめたと 負け惜しみ」(朝日新聞「しごと川柳」2001.02.05 p.20)という例があります。また、「安らぐ」も、「ゆったりとした席に座ると身も心も安らげて、とにかく居心地がよい。」(VISA広告「Hanako」2000.02.02 p.53)のような例もあります。

「大学に受かれる」は、ワープロでも「浮かれる」しか出てきませんが、「受かることができる」という形にすると、やや言いやすくなります。電子辞書版『明鏡国語辞典』には「受かることができる」という用例が出ているそうですが、ほんとうでしょうか。手元の紙の辞書ではその例文はありませんが。

 ◇

また、その中学人留学生は、自動詞で言うか他動詞で言うか、迷う場合もあるようです。

・「牛乳が温まらない」か「牛乳を温められない」か
・「電話が(うまく)かからない」か「電話をかけられない」か
・「バイト〔が〕、見つかったの?」か「バイト〔を〕、見つけられたの?」か

私(Yeemar)の考えでは、「温まらない」は、私は温めるための手段を十分に尽くしたのに、周りの環境のせいで、牛乳が温かくなることが実現しないという感じがします。一方、「温められない」は、周りの環境だけでなく、私の技術・能力が十分でないという感じがします。

朝鮮語では、両者を使い分けることができるようです。「牛乳が温まらない」は「ttatteuthaejiji ana〔温かくなら ない〕/deueo jiji ana〔温まら ない〕」、「牛乳を温められない」は「ttatteuthage hal su eopseo〔温かく する ことが できない〕/de'ul su eopseo〔温める ことが できない〕」のように言うそうです。中国語では、表現し分けることがむずかしいのかもしれません。
posted by Yeemar at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語と外国語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北杜夫『さびしい乞食』の役割語など

方言で翻訳するや、たいさんありますに関わる話題です。

北杜夫『さびしい乞食』は翻訳ではありませんが、英語でしゃべったはずのことを日本語で書いています。(頁は新潮文庫)
p39に、
「それはペンですか。いいえ、それはレコードです」
と、若さまは英語でいい、
「失礼。ぼくは初めにこう言わないと、うまくしゃべれないのです。……
と、後の清水義範に通じるようなことを書いていますが、役割語的なものも出てきます。
p49から登場のデビルファーザー氏は「わからんかった」「神秘なものじゃ」などと話し、p72以降に出て来る「なかんべえ」「……でさあ」と話す乞食のベン・スタイン、p142では「ひどいナマリのある英語」として「たいへんおもしろいある」「どこにいたあるか」などと話す人物が出てきます。



posted by 岡島昭浩 at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語と外国語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月05日

朝鮮語(韓国語)と日本語

朝鮮語(韓国語)は、日本語と似ていると言われますが、留学生諸君の話を聞いていると、意外な違いがあることを教えられます。

・「では、○○さんに登場していただきましょう」とは言わない
朝鮮語に「チュダ」という動詞はあり、「(……して)やる(あげる)」「(……して)くれる(くださる)」という意味は表すことができる。しかし、「(……して)もらう(いただく)」という意味は表さないので、「〜ていただきましょう」という言い方は朝鮮語にないわけ。

「パリを案内してやってくれ」、「(私のギャグを)笑ってやってください」のように「やる」+「くれる」を重ねる言い方もないようです。
posted by Yeemar at 20:26| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本語と外国語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

驚くべきロシア語

このカテゴリ名について。「『日本語と外国語』などという大胆すぎる書名には警戒が必要である。」(小松英雄『日本語はなぜ変化するか』笠間書院 p.11)とのことですが、まあ、お許しいただきましょう。

さて、ラジオでロシア語を習い始めて、もう2、3年になります。すぐ挫折し、しばらくたってやり直すという繰り返しです。

素人には、なかなか驚くことがいっぱいです。理由が分からないこともあります。それらを思いつく限り列挙しようと思います。堪能な方にとってはお笑い草ですが……

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・基本語が異様に長い
日本語では、「見る」「聞く」「言う」「話す」など、基本語は音節数が短いというのがふつうだと思います。上記の語は英語でも「look」「hear」「say」「talk」と1音節です。ところが、ロシア語ではそれぞれ「スマトリエーチ(смотреть)」「スルーシャチ(слушать)」「ガバリーチ(говорить)」、そして、「話す」に至っては「ラズガバーリバチ(разговаривать)」と、ずいぶん長くなります。それだけ聞くと、どんな難解な専門用語かと思います。これでは、日常の用を足すにも、ずいぶん口を動かさなければならず、不便ではないでしょうか。どこで帳尻を合わせているのでしょう。

・「п」(p)で始まる語が異様に多い
日本語の辞書は、「し」で始まることばが最も多いのではないかと思います(漢語に「し」「しゅう」「しょう」などで始まるものが多いから)。ロシア語の場合、「п」(p)で始まる語が異様に多く、『博友社ロシア語辞典』を横から見ると6ミリほどに達します。2位(?)の「с」(s)はせいぜい3.5ミリほど、他の文字は3ミリに達しません。前置詞の「по」(…を、…に沿って)がくっついたものが少なくないせいかと思いますが、それだけではないようです。

・むずかしい「че」「це」「те」の区別
「че」「це」は簡単で、それぞれ「チェ」「ツェ」という日本語で表しうると思います。前者は[t∫e]、後者は[tse]でしょう(正確には、それらの子音が口蓋化したものと思います)。

では、「те」は? 日本語の「テ」([te])ではなく、子音は[t]の口蓋化した音のようです。「те」は、耳で聞くと「チェ」のようにも「ツェ」のようにも聞こえます。「че」「це」と区別できません。

そもそも、口蓋化した[t]とは何でありましょうか。思うに、英語の「tea」というときの[t](ティーではなくチーのようになる、しかし決して[t∫i:]ではない音)ではないかと思い、今のところは、「tea」の子音を思い浮かべながら「т」を発音しています。
posted by Yeemar at 19:20| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本語と外国語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする